味・旅・遊

〝栃木アユ〟を食べつくす 北関東の清流 那珂川

炭火で焼き上げるアユの塩焼き=栃木県那須烏山市のあゆの里 矢沢のヤナ(伊沢利幸撮影)
炭火で焼き上げるアユの塩焼き=栃木県那須烏山市のあゆの里 矢沢のヤナ(伊沢利幸撮影)

北関東屈指の清流、那珂川(総延長約165キロ、うち約120キロが栃木県)は、古くからアユ漁が盛んで「西の四万十(しまんと)川、東の那珂川」と称される。天然アユが遡上(そじょう)し、多くの釣り人に愛され、アユの漁獲量は日本一。アユ釣りが解禁となった那珂川沿いを歩き、栃木を代表するアユ料理を通して〝栃木アユ〟の魅力に迫ってみたい。

栃木県北部の那須岳(那須町)山麓を源として県北東部を南に流れ茨城県を経て太平洋に注ぐ、関東第3の大河、那珂川。川沿いには竹などで組んだ「やな」で魚を取る「やな漁」を備えた食事処「観光やな」が次々とオープンし、アユ料理が楽しめる。

ただ、やな漁が始まるのは8月ごろで、この時期、提供されるのは養殖アユ。そこで天然アユが味わえる観光やなに向かった。

那須烏山市にある「あゆの里 矢沢のヤナ」。創業88年、那珂川最大規模の大やなで知られる。昨年、やなで取れた天然アユを冷凍してストック。事前に注文があり、在庫があれば提供するという。

さっそくお邪魔して、天然アユの塩焼きを味わった。炭火で焼いた熱々の塩焼きにかぶりつくと、口いっぱいに広がるアユの香り。香魚とはいえ、冷凍のため香りはないかと思ったが驚き。炭火でじっくり焼かれ、皮は香ばしく、身はふっくらと上品な味わい。塩加減も絶妙でアユのうまみを引き立てる。

4代目店主の小林圭さん(51)によると、那珂川は流れが速く、アユの身が締まっているのが特徴。現在、冷凍してストックしている天然アユは10キロほど。

次に訪ねたのは大田原市を流れる那珂川近くのそば処「禅味一笑」。アユの創作料理で知られる。店主の清矢彰さん(66)がこれまでに手がけたのは10品以上。アユの薫製やアユのコロッケ、アユの丼物をはじめ、アユのチップスにアユせんべい…。どれも那珂川の近くで生まれ育ち、アユを知りつくした清矢さんならではの料理だ。

大田原ブランドにも認定されている「黒羽鮎どん」=栃木県大田原市のそば処 禅味一笑(伊沢利幸撮影)
大田原ブランドにも認定されている「黒羽鮎どん」=栃木県大田原市のそば処 禅味一笑(伊沢利幸撮影)

店で注文したのは「黒羽鮎どん」。「あゆチップす」とともに大田原ブランドにも認定さている清矢さん自慢の一品だ。天然小アユを開き油で揚げ、甘辛い特製のアユみそをアユのだし汁でとき、煮込んで仕上げる。

身はふんわりとしていて柔らかく、アユみそをといた甘辛いだし汁との相性も抜群。子供にも食べてほしいと甘めの味付けになっている。秘伝のアユみそは絶品で「鮎どんを食べてアユみそだけを売ってほしいという客もいる」という。

また、さくら市の「道の駅きつれがわ」では、アユの開きなど加工品が販売されている。中でも注目は、「かんたん鮎めしの素」。那珂川などの川筋で昔から食べられている郷土料理、アユ飯を手軽に家庭でも楽しんでもらおうとアユ養殖の会社「喜連川水産」が開発した。

アユの魚醤を使った秘伝のたれと身が骨まで柔らかく処理されているアユが入っていて、お米と一緒に炊き込むだけで完成。本格的なアユ飯が味わえる。道の駅の隣には土日限定で、同社の直営店「鮎小屋」が営業。鮎めしの素を使ったアユ飯も販売している。

江戸時代から、栃木の名物として紹介されてきたアユ。やな漁の伝統とともに食文化は今も受け継がれ観光資源になっている。旬を迎える天然アユを求めて再び那珂川を訪ねたい。(伊沢利幸)

アクセス

あゆの里 矢沢のヤナ 東北自動車道矢板ICから約40分、JR烏山駅からバスで滝田下車、徒歩約5分(0287・84・1187)

そば処 禅味一笑 矢板ICから約1時間(0287・54・4454)

道の駅きつれがわ 矢板ICから約20分、JR氏家駅から観光温泉バスで約20分。(028・686・8180)

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