セゾン投信、中野会長の退任が波紋 顧客離れの懸念も

セゾン投信の中野晴啓会長
セゾン投信の中野晴啓会長

資産運用会社、セゾン投信の中野晴啓会長兼最高経営責任者(CEO)の退任が波紋を呼んでいる。同社は5月末の取締役会で中野氏を退任させる人事を決定した。関係者によれば、親会社のクレディセゾンとの路線対立が背景にあるとされ、事実上の解任とみられる。中野氏は「積立王子」の愛称で知られ、少額の長期積み立てを普及させた立役者でもあり、同氏の理念に賛同して取引をする顧客も多い。今回の退任で顧客離れが懸念される。

セゾン投信は28日の株主総会で中野氏の退任を正式決定する。中野氏は産経新聞の取材に「お客さま全部主義のもと、誠心誠意、職務を全うしてきたことから不本意な退任だと思っている」と述べ、「これ以上は申し上げられない」としている。

関係者によると、長期積み立てを重視し、直接販売にこだわる中野氏と外部販売の拡大を主張するクレディセゾンの林野宏会長との間で溝が生まれ、関係が悪化していたという。

クレディセゾンは5月に不正融資問題で金融庁から一部業務停止命令を受けたスルガ銀行を持ち分法適用会社にするなど外部との連携に力を入れている。中野氏の退任について、同社は「株主総会後までコメントできない」としている。

セゾン投信の口座保有者は約15万人で運用資産総額は約6千億円。クレディセゾンが約6割、日本郵便が約4割の株式を保有する。中野氏は勉強会を通じて、長期積み立ての投資意義を発信し続けてきた。若者向けの投資セミナーを積極的に開催し、金融教育にも力を入れていた。

今回の退任について、セゾン投信の立ち上げに協力してきたさわかみホールディングスの澤上篤人代表は「(セゾン投信には)中野氏を信じて、長期積み立てで資産形成したいという顧客が多い。これから反発が起きて、解約が増える可能性もある」と懸念する。

政府は「資産所得倍増プラン」を掲げ、「貯蓄から投資」を促している。顧客本位の業務運営を資産運用会社に求めている。来年には新たな積み立て少額投資非課税制度(NISA)も始まり、「金融経済教育推進機構」が設置される。政府の骨太の方針案でも資産運用会社の改善が目玉施策の一つとなっている。

中野氏は金融庁の有識者会議のメンバーを歴任し、6月末に投資信託協会の次期副会長に内定している。業界内では中野氏の活躍を期待する声も多かっただけに、今回の退任は顧客本位の資産運用の機運醸成に水を差しかねない。(黄金崎元)

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