バルサと国立での対戦にイニエスタ万感「いい思いを残してくれたらうれしい」

試合後、観客の声援に応える神戸・イニエスタ=国立競技場(撮影・福島範和)
試合後、観客の声援に応える神戸・イニエスタ=国立競技場(撮影・福島範和)

イニエスタは楽しそうだった。神戸に初タイトルをもたらし、自身が天皇杯を掲げた東京・国立競技場での古巣バルセロナとの対戦。6日に行われた国際親善試合で、キャプテンマークを巻いて今季初の先発出場を果たしたイニエスタは持ち前の高い技術力をいかんなく発揮した。

バルセロナとスペイン代表で共に一時代を築いてきた敵将のシャビ監督をして「ベテランの域に入っているが、試合中のクオリティーには目を見張るものがあった」と言わしめるプレーを披露。得点にはつながらなかったが、スルーパスで何度も好機を演出し、自らペナルティーエリア内に進入してシュートも放った。

後半36分に交代を告げられると、スタンドのファンに両手をたたいて感謝。一礼してピッチを去った。試合後にはシャビ監督と抱き合い、健闘をたたえ合った。

「スペインのサッカーにも、バルサのサッカーにも素晴らしいものをもたらした一人だと思う」とシャビ監督。神戸の吉田監督も「随所に素晴らしいプレーを見せ、決定機もつくってくれた。改めて素晴らしい選手だと感じた」と感想を話した。

「強行スケジュールで(日本に)来てくれたことを感謝している」とバルセロナへの謝意を示したイニエスタは「このスタジアムでバルサと試合ができたことは本当に特別。すべてがいい一日だった。この試合は日本のサッカーファンへのお別れを告げる場。リスペクトと愛情に恩返しする日だった」と強調。その上で「(日本のサッカーに)残そうと思ってきたのは、ピッチの中でも外でも、情熱だったり、リスペクトの気持ちだったり、すべてを出し尽くすように心がけてきた。みなさんがいい思いを残してくれていれば、うれしい。みなさんからリスペクトを感じ、素晴らしい扱いを受けてきた。この5年間の神戸の経験が人生の一部となっている。それを思い出していると、特別な感情がわいてきた」と言った。日本サッカー界に大きな足跡を残した39歳の魔法使いは、試合後に場内を一周して感慨に浸った。(北川信行)

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