次期衆院選を巡り、自民党内で公明党に対する疑心暗鬼が広がっている。公明が関西で日本維新の会と候補者調整する見返りに、自民候補を推薦しないと通告した東京都で維新と協力するとの見方が浮上しているのだ。公明、維新ともに表向きは否定するが、双方の利害が一致する面もあるだけに、自民の懸念は消えない。(沢田大典)
「堅固な自公政権の連携のもとで政策を前に進めたい」
岸田文雄首相(自民総裁)は6日の政府与党連絡会議で、公明の山口那津男代表らを前に、改めて自公連携の重要性を訴えた。
しかし、その足元で広がるのは公明が禁じ手を使うのではないかとの疑念だ。
維新は次期衆院選で、全289選挙区での候補擁立を目指す方向だ。この中には、維新が公明の現職に配慮し、擁立を見送ってきた大阪府と兵庫県の6選挙区も含むとみられる。
公明側が衆院選挙区「10増10減」に伴う選挙区調整を巡り、新設される選挙区で公明候補の擁立を求めてきたのも、維新が強い関西で見込まれる目減りを補う目的があった。
一方、維新は浮動票が多く、無党派層や野党支持層も目立つ東京を中心とする都市部での議席確保を狙っている。公明が都内でかたくなに自民候補の推薦を拒む状況も踏まえ、自民の閣僚経験者は「維新が関西でいくつかの選挙区を公明に譲り、公明は引き換えに東京で票を回すのではないか」と疑う。
公明、維新とも表向きは共闘を否定している。山口氏は5日の講演で、「維新との選挙協力や連立は考えていない」と述べた。維新の馬場伸幸代表も5月30日、都内で記者団に「全く考えていない」と述べた。
それでも、自民は警戒を解いていない。公明は支持母体の創価学会を中心に1選挙区につき2万票ほどの集票力があるとされる、一部でも対立候補に流れれば選挙区での勝敗が逆転する状況も考えられる。
4日に投開票された都議補選(大田区、欠員2)では、立憲民主党と共産党の支援を受けた無所属の元職がトップ当選し、公明の推薦を受けなかった自民元職は2位当選に甘んじた。維新新人は1万票差で落選したが、維新と公明が一定の存在感を発揮したとの受け止めが広がっている。
自公の亀裂はどこに行きつくのか。自民都連幹部は旧知の公明都本部の幹部に対し、シェークスピア戯曲を持ち出してささやいた。
「私たちはロミオとジュリエットだ。実家が付き合うなと言っている。悲恋の2人だ」