新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが5月8日に季節性インフルエンザ並みの「5類」に移行して、まもなく1カ月。コロナ禍では財政の悪化、デジタル化や国産ワクチン開発の遅れなど、多くの課題が浮き彫りになった。新型コロナへの対応で巨額の予算が使われたことについて、白鴎大の藤井亮二教授は、会計検査院などの指摘が予算編成に反映されない現状を指摘した。藤井氏の談話は次の通り。
「緊急かつ必要」が求められる補正予算の中に新型コロナ関連だけでなく、中長期的な施策も含んだ経費の計上に違和感がなくなり、財政規律がまひしていると言わざるを得ない。会計検査院や経済財政諮問会議では、不適切なカネの使い方のチェックにとどまっている。財政の観点から検証するのであれば、政策の妥当性や予算計上の適否から見直す必要がある。
だが、行政や役人のすることに誤りなどあり得ないとする「官僚の無謬(むびゅう)性」が強く働き、しっかりとした検証ができていない。戦後の高度経済成長期の日本経済をうまく機能させてきた官僚の自負もあるのか、途中で誤りに気付いても、方針を押し通して強弁を続けることが常態化している。
決算で明らかになった問題点や会計検査院の指摘を、予算の編成や執行に確実に反映できる仕組みを作るべきだ。現状は、予算編成の担当者は予算を作り、決算の担当者は問題を指摘すればそれぞれの役目を終えたことにしてしまい、「PDCA(Plan=計画、Do=実行、Check=評価、Action=改善)」が実際には機能していない。
それを機能させる案として、会計検査院による会計検査の際に、(国の予算案を査定して作成する)財務省の主計官を立ち会わせることが考えられる。会計検査院は予算が効率的に使われているか、支出は適切かを厳しくチェックする。財務省は予算がどのように使われたかを第三者の立場で見て、次の予算編成に生かすべきだ。(聞き手西村利也)