藤井聡太七冠が牽引(けんいん)する将棋人気と歩調を合わせるように、将棋漫画も花盛り。多種多様な作品が生み出されている。将棋界を駆け上がる女子中学生が主人公の柳本光晴作『龍と苺』など、多くの作品が棋士の悲喜や勝負の世界の残酷さを描く一方、『花四段といっしょ』は将棋漫画の〝定跡〟から少し外れる。
棋士の知られざる日常や対局中の雑念に焦点を当て、将棋のルールを知らなくても楽しめるゆるさが持ち味。インターネット対局中継の浸透を背景に、特定の棋士や対局中の食事などに注目する「観(み)る将」の存在が顕在化してきているが、本作を読むとその気持ちが腑(ふ)に落ちる。
主人公はプロ3年目の男性棋士、花(はな)つみれ四段。一見、凜(りん)としたスーツ姿が好印象の若者だが、中身は相当な変わり者である。