主張

トルコ大統領再選 露の侵略抑制へ転換図れ

5月29日、トルコ大統領選で勝利し、首都アンカラの大統領宮殿で演説するエルドアン大統領(ロイター)
5月29日、トルコ大統領選で勝利し、首都アンカラの大統領宮殿で演説するエルドアン大統領(ロイター)

トルコ大統領選で、現職のエルドアン氏が再選した。20年続いた長期政権がさらに5年続く。

エルドアン政権のトルコは、ウクライナに軍事用ドローンを売却したほか、ロシアの妨害を排しウクライナ産穀物を黒海経由で輸出するため、仲介役を果たした。

一方で、ロシアのプーチン大統領とも対話のパイプを維持し、ロシアからの原油やガスの輸入を拡大させた。

ウクライナ侵略に関する国連の対露非難決議に賛成したが、対露制裁に参加していない。トルコはいわば、双方に顔が利き、国際社会での影響力も小さくない。

トルコは北大西洋条約機構(NATO)の加盟国でもある。ロシアによるウクライナ侵略という暴挙をやめさせるよう、影響力を行使してもらいたい。

欧州、アジア、中東の結節点に位置するトルコは、黒海から地中海に抜けるボスポラス海峡を押さえる地域大国だ。NATO唯一のイスラム教国でもある。

大統領選は、インフレ率が40%を超える経済混乱と、トルコ・シリア大地震の復興の遅れがエルドアン陣営に逆風となった。それでも再選したのは、欧州と一線を画すトルコ民族主義を背景に地域大国の地位を築いたエルドアン氏をイスラム教保守層を中心に国民が支持したためだ。ただ、選挙期間中に国内外から批判のあった強権体質は改めねばならない。

再選の祝福はプーチン氏、ウクライナのゼレンスキー大統領双方から受けた。欧米からも「NATO同盟国として安保で強い協力を」(スナク英首相)、「NATO加盟国として共通課題に取り組む」(バイデン米大統領)など祝辞が相次いだ。エルドアン氏は対露姿勢などを巡り悪化した欧米諸国との関係修復を急ぎ、プーチン氏に圧力をかけるべきだ。

クルド人武装組織への支援を理由にスウェーデンのNATO加盟に反対を続けているが、喜ぶのはプーチン氏である。ロシアの暴挙を止めるためにも、結束を乱してはならない。エルドアン氏はスウェーデンの加盟を認めなければならない。

トルコは親日国でグローバルサウスの代表格でもある。岸田文雄首相は、伝統的に良好な関係を生かし、エルドアン氏に対露姿勢を転換するよう積極的に働きかけてほしい。

会員限定記事会員サービス詳細