5日に判明した経済財政運営の指針「骨太の方針」の原案では、外交・防衛分野の重点施策として、偽情報対策を含む情報収集・分析、情報発信に関する体制強化を盛り込んだ。南西諸島有事をにらんだ避難施設を確保する方針も示した。安全保障環境については昨年から表現を強めて「戦後最も厳しく複雑」とし、令和9年度までの5年間で防衛力を抜本強化するとした。
今回の骨太の方針は、昨年末に防衛費の大幅増額を盛り込んだ「安保3文書」が閣議決定されてから初めて取りまとめられる。昨年の骨太の方針では安保環境について「一層厳しさを増している」と記述していたが、安保3文書を踏まえてより厳しい認識を示した。
具体的な施策としては、サイバー攻撃を未然に防ぐ「能動的サイバー防御」の実施に向けた体制を整備する方針を明記。「持続可能な防衛産業の構築」を目指す考えを示したうえで「画期的な装備品等を他国に先駆けて実現する研究開発、民生の先端技術の積極的な活用に取り組む」とした。
経済安全保障の分野では、国民生活や経済活動にとって重要な物資の製造を担う民間企業に対して「資本強化を含めた支援の在り方について、検討を進める」と初めて盛り込んだ。
また、安保3文書を踏まえて新設された、価値観を共有する同志国の軍を直接支援する枠組み「政府安全保障能力強化支援(OSA)」に関しては「戦略的に推進する」と明記。「宇宙基本計画」に基づき「宇宙の安全保障に関する総合的な取り組みを強化する」とした。
一方、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた取り組みに関しては、米国、オーストラリア、インドと並び韓国との協力連携を特記した。昨年は韓国について言及していなかったが、最近の日韓関係改善を反映したとみられる。
岸田文雄首相がこだわりをみせる核の問題についても詳しく言及した。「『核兵器のない世界』に向け、『ヒロシマ・アクション・プラン』の着実な実施等を通じ、核を含む軍縮・不拡散に向けた国際的な取り組みを主導する」とした。
防衛力強化に関しては、「スタンドオフ防衛能力」など7つの柱を重視する方針を明示。弾薬・燃料の確保や主要防衛施設の強靱(きょうじん)化を加速するとともに、反撃能力や無人機などを念頭に「将来の中核となる能力を強化する」とした。