米中対立の中で、岸田文雄首相には果たすべき重要な役割がある。1000年以上の交流を通してわが国が見てきた中国の実相を、米国に直言すべき時だ。
シンガポールで開催されたアジア安全保障会議(シャングリラ対話)で、米国のオースティン国防長官は、中国の李尚福(り・しょうふく)国務委員兼国防相との会談を果たせなかった。李氏は日本を含めた先進7カ国(G7)の他の国防相らとは会談し、米国を排除した。分断策は彼らの得意とするところだ。中国はこの1年ほどで米国の対話要請を高官級で十数回、実務レベルで十回近く断ってきたとも伝えられた。
安倍晋三元首相は首相時代、G7首脳にどの国よりも長い中国との交流の歴史を持つ立場から中国の考え方を説明したという。最初はあまり耳を傾けなかった首脳たちは香港弾圧、ウイグル人ジェノサイド(大量虐殺)、南シナ海の軍事拠点化などを見て、警戒し始めた。