その女性は「マスクを外せない」と言った。「顔を見られるのが恥ずかしいから」と。そして「外している友人を見てすごいな」と感じ、梅雨明けには外せるようになりたいという。外せないことに引け目を感じ、努力しようと考えているのだ。
▶彼女はマスクをつけ続けたいが、認められなくなりそうな空気を感じている。ここは「努力して外してみよう」と励ますべき、なのだろうか。「頑張れ」と、声援を送るべきなのだろうか。理由はよくわからないが、「そんなに頑張ることはないよ」というのが、小欄の思いだ。
▶雨が降ったあとの、せせらぎを見たからかもしれない。水はちっとも努力をしない。1ミリでも低いところを通り、障害にぶつかれば廻りこみ、ずんずん流れていく。その自然さはすがすがしいほどだ。なぜ社会は個人に無意味な努力を強いるのだろう。なぜ個人はその空気を感じてしまうのだろう。小さなマスクなど、どうだっていいじゃないか。