日本文化・将棋を広めたい 棋聖戦会場のダナン三日月、コロナ禍乗り越え悲願の開催

ベトナムの「ダナン三日月」にある「将棋堂」を見学する藤井聡太棋聖(右)と佐々木大地七段=4日、ベトナム・ダナン(鴨川一也撮影)
ベトナムの「ダナン三日月」にある「将棋堂」を見学する藤井聡太棋聖(右)と佐々木大地七段=4日、ベトナム・ダナン(鴨川一也撮影)

第94期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負(産経新聞社主催)の開幕局が行われる、ベトナム中部ダナンのリゾートホテル「ダナン三日月」は、コンセプトに「日本文化の発信基地」を据える。一環で将棋をPRすべく、2019年、日本将棋連盟に対局を要望していたが、世界は新型コロナウイルスの流行に見舞われた。コロナ禍が落ち着き、くしくも日本とベトナムの外交関係樹立50周年となる今年、実現した注目の一戦。日本から畳を運びこみ、料理長を呼び寄せるなど、もてなす側の準備も万全だ。

「ようやく実現できたという思いです」。ダナン三日月の益子(ましこ)美智緒・会長室室長が感慨を込めた。

ホテル三日月グループは、千葉県木更津市や栃木県日光市などでホテルやゴルフ場を運営している。ダナンでのホテル建設は、2017年に計画された。益子室長は「グループにとっての初の海外進出で、日本文化を打ち出すべきだという考えがあった。その中で将棋を広めようという思いがあった」と説明する。

第1局の会場「ダナン三日月」=4日、ベトナム・ダナン(鴨川一也撮影)
第1局の会場「ダナン三日月」=4日、ベトナム・ダナン(鴨川一也撮影)

ダナン三日月がオープンする際に「将棋の対局ができれば」と2019年に日本将棋連盟に要望。実現に向け動き出した直後、コロナ禍に直面した。棋士らが渡航しての対局は難しくなり、2021年にはベトナムはロックダウンを行い、ホテルの工期も延びた。2022年6月、やっとオープンを迎え、対局を受け入れる準備が整った。

13ヘクタールという広大な敷地では、さまざまな日本文化や「おもてなし」に触れられる。ホテル内には相撲の土俵や甲冑(かっちゅう)などがあり、五重塔が建つ日本庭園もある。日本将棋連盟の佐藤康光会長が揮毫(きごう)した「王将」の文字が彫られた石の駒も置かれた。こうした日本文化が、海外の対局が初めてという藤井聡太棋聖(20)と佐々木大地七段(28)にとっては「安心感をもってもらえるのでは」と益子室長は話す。

できるだけ日本と同じ条件で対局できるよう、畳などは日本から運び込んだ。「勝負めし」として注目される両対局者の昼食では日本料理にも対応すべく、日光市のホテルの料理長を呼び寄せた。おやつは地元のスイーツを準備している。

対局前日の4日までの3日間、ホテル敷地ではアニメフェスが行われ、日本アニメのキャラクターにふんしたベトナムの若者たちでにぎわった。益子室長は「両対局者も若く、ベトナムの若い方と何かしら通ずるものがあると思う。親日であるベトナムの方々に、日本の将棋に興味を持ってもらいたい」と話した。(中島高幸)

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