国会は終盤に入り、与野党の攻防がヤマ場を迎えつつある。政府・与党は外国人の送還や収容のルールを見直す入管難民法改正案を7日にも成立させ、残る法案も21日の会期末までの成立に万全を期す。野党の立憲民主党などは内閣不信任決議案の提出を視野に入れているが、岸田文雄首相(自民党総裁)が衆院解散で対抗しかねないとして慎重論もある。与野党の駆け引きが激化しそうだ。
首相は5日の党役員会で「終盤は緊迫の度を加えた展開になることが予想される」と述べた。これに先立ち、首相は党本部で麻生太郎副総裁、茂木敏充幹事長と会談。政権運営を巡り意見交換したとみられる。
会期末まで残り2週間余りとなった今国会は61本の政府提出法案(継続1本含む)のうち47本が成立した。
野党が激しく反発している入管難民法改正案を巡っては、立民が杉久武参院法務委員長(公明党)の解任決議案を提出し、1日の法務委での採決を阻止した。解任案は2日の参院本会議で否決され、杉氏は6日の法務委での採決を職権で決めた。改正案は7日の参院本会議で可決、成立する見通しだ。ただ、野党が6日の法務委採決前に斎藤健法相の問責決議案を出せば、日程は一層窮屈になる。
防衛費増額の財源を確保するための特別措置法案も与野党対決型だ。立民や日本維新の会など野党は増税が前提になるとして一致して反対する。衆院での審議では立民などが塚田一郎財務金融委員長(自民)の解任決議案と鈴木俊一財務相の不信任決議案を提出し、委員会採決が2度、先延ばしとなった。
LGBTなど性的少数者の理解増進を図るための法案についても、与党案と立民などの案、維新と国民民主党の案の3案が議員立法として提出されたが、審議は始まっていない。自民幹部は「今週中に協議を始めないと今国会での成立が厳しくなる」と話す。一方、自民内には「審議せずに廃案にすべきだ」(中堅)との声も根強い。
法案成立を確実にするため、短期間の国会会期延長の可能性もささやかれている。参院幹部は「延長の場合は衆院解散の公算が大きくなる」と話した。
野党が内閣不信任決議案を提出するかどうかも焦点だ。立民にとっては政権に対峙(たいじ)する姿勢をアピールできる一方、衆院解散を誘発しかねない。候補者擁立作業が遅れている立民などにとって、提出は不利との見方もある。立民執行部は世論の動向を見極めながら慎重に検討する。(奥原慎平)