梅雨は戦前までは、黴雨と書かれていた。食べ物などに黴(かび)が生えやすくなるからだ。梅毒トレポネーマという細菌によって感染する性病の梅毒も同じように黴毒だった。細菌はかつて黴菌(ばいきん)と呼ばれていた。
▼1492年にアメリカ大陸を「発見」したコロンブスの一行が持ち帰ったとする説が広く知られている。航海を終えた船員の多くは傭兵(ようへい)となった。2年後に起きたフランスとイタリアとの戦争に従軍して、ヨーロッパ全土に拡大していった。
▼数年後にはバスコ・ダ・ガマの一行によりインドに到達する。中国を経由して戦国時代の日本にも上陸、江戸時代には大流行した。当時の人骨を調査したところ、江戸庶民の54・5%が梅毒患者だったとの推計もあるほどだ。