【ソウル=桜井紀雄】北朝鮮は4日、船舶の安全確保を管轄する国際海事機関(IMO)が北朝鮮の軍事偵察衛星打ち上げを非難する決議を採択したことに反発して「われわれの事前通報がもはや必要ないという機関の公式な立場とみなす」と朝鮮中央通信を通じて表明し、事前通告なしの再打ち上げを示唆した。
北朝鮮は、日本やIMOに打ち上げ期間として通告した初日の5月31日に国連安全保障理事会決議が禁じる弾道ミサイル技術を使った打ち上げを強行。その後に失敗を発表し、早期に再発射する方針も示した。
日本は、沖縄方面への落下に備えて迎撃態勢を維持しているが、発射期間や飛翔(ひしょう)体の落下地点の通告がなければ、落下予測を立てづらくなり、日本側の防衛態勢にも影響しかねない。
今回の表明は政府側の公式談話などではなく、「国際問題評論家」名の記事の体裁をとっており、国際社会の出方を見定めた上で、事前通告取りやめの最終判断を下す可能性がある。
記事は、今後の打ち上げでの発射期間や飛翔体の落下地点をIMOが自ら把握して対策を講じる必要があると主張しており、日本など周辺国にも事前通告しない可能性がある。
一方、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記の妹、金与正(ヨジョン)党副部長は4日に報じられた談話で、安保理が北朝鮮の偵察衛星打ち上げについて協議する緊急会合を開いたことを「この上なく不快に思う」とし、「内政干渉的な主権侵害行為」だと非難した。打ち上げは「米国や追従勢力の軍事的脅威に対応する正当防衛権の行使だ」と主張し、米国などが「誤りを自認するまで強力に対応していく」と警告した。
2日の安保理会合では米国と対立する中国やロシアが北朝鮮を擁護し、具体的対応は打ち出せなかった。