藤井の4連覇か、佐々木の初戴冠か ヒューリック杯棋聖戦、5日にベトナム・ダナンで第1局

将棋のヒューリック杯棋聖戦第1局が開催されるベトナム・ダナンに到着し、シンボル「ドラゴンブリッジ」前で記念撮影に応じる藤井聡太棋聖(左)と佐々木大地七段=3日、ベトナム・ダナン(鴨川一也撮影)
将棋のヒューリック杯棋聖戦第1局が開催されるベトナム・ダナンに到着し、シンボル「ドラゴンブリッジ」前で記念撮影に応じる藤井聡太棋聖(左)と佐々木大地七段=3日、ベトナム・ダナン(鴨川一也撮影)

藤井聡太棋聖(20)=竜王・名人・王位・叡王・棋王・王将=に佐々木大地七段(28)が挑戦する将棋のタイトル戦「第94期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負」(主催・産経新聞社、日本将棋連盟、特別協賛・ヒューリック)が5日、ベトナム・ダナンで開幕する。最年少7冠の藤井棋聖は4連覇が懸かり、佐々木七段はタイトル初挑戦で初の棋聖獲得を狙う。

第1局の対局会場となるベトナム・ダナンの「ダナン三日月」(鴨川一也撮影)
第1局の対局会場となるベトナム・ダナンの「ダナン三日月」(鴨川一也撮影)

藤井棋聖は昨年の棋聖戦で、10代最後の対局となった第4局を制し、3連覇を達成。タイトル戦負けなしの強さを見せつけた。

佐々木七段は今期、決勝トーナメント(本戦)から登場。前期挑戦者の永瀬拓矢王座(30)との挑戦者決定戦は鋭い指し回しで圧倒、挑戦権を獲得した。

公式戦の成績は2勝2敗。直近での対局は令和3年9月で、藤井棋聖が勝利している。戦型は、いずれも飛車先の歩を突き合う相掛かりで、両者がともに得意としている戦法だ。

タイトル戦無敵の藤井棋聖の4連覇か、タイトル初挑戦の佐々木七段が勢いに乗って「藤井1強」時代にブレーキをかけるか。20代の2人が初めて激突するタイトル戦の行方が注目される。

藤井棋聖「手ごわい相手、作戦練って臨む」

決勝トーナメント(本戦)では、佐々木七段の強さが際立っていると感じるところが多かった。渡辺明前名人(39)との準決勝、永瀬拓矢王座との挑戦者決定戦は、どちらも相掛かりから定跡を外れて、力戦に近い展開になりました。その中で中盤にかけて一歩抜け出し、非常に強い内容でした。特に挑戦者決定戦の駒組みは巧みで、本格的な戦いでは既に先手(佐々木七段)のペースになっていて、立ち回りが際立っていました。

藤井聡太棋聖(萩原悠久人撮影)
藤井聡太棋聖(萩原悠久人撮影)

佐々木七段とは久しぶりの公式戦で、これまで2勝2敗。内容的にはこちらが押されている将棋が多かった。佐々木七段は経験値が高くて柔軟さがあり、手ごわい相手という印象です。

最近、(私は)角換わりにシフトし、結果的にうまくいきました。五番勝負では、作戦をどう組み立てていくかが一つの重要なポイントになると思います。できる限り練って、より良い状態で臨みたいです。

開幕はベトナムですが、海外自体が初めて。料理がおいしく、豊かな文化のイメージがあります。対局は普段とは違わないと思いますが、集中してできれば。一方で、ベトナムを楽しみたいとも思っています。

最近の対局は角換わり以外も多く、判断の精度が下がってしまうところがあります。それを少しずつ強化していけるようにしたい。

五番勝負では、見ていただく方にとって面白いと思ってもらえるようなシリーズにできるよう頑張っていきたいと思います。

佐々木七段「新鮮な気持ち、全力でぶつかる」

タイトル挑戦のチャンスは過去に1回ありましたが、直前で負けて悔しい思いをしました。タイトル戦は念願の舞台。それも藤井棋聖が相手で、自分の力を出し切って全力でぶつかっていきたいと思います。

佐々木大地七段(酒巻俊介撮影)
佐々木大地七段(酒巻俊介撮影)

決勝トーナメント(本戦)は厳しい戦いになると思っていましたが、準決勝で渡辺前名人に勝てたときは多くの人から熱い応援の声をいただきました。「チャンスを生かすしかない」と、気持ちが強くなりました。

藤井棋聖はバランス良く、どのような状況でも崩れない強さがあります。読みの精度も抜きんでています。過去、藤井棋聖相手に序盤でリードする将棋はほとんどなかった。厳しいシリーズになると思います。

初めてのタイトル戦で、初の海外対局です。分からないことだらけですが、新鮮な気持ちではあります。

普段、研究会で実際に指した将棋をAI(人工知能)で研究し、序盤や中盤での読みや形勢判断の参考にしています。流行している戦型や面白そうな戦型を見つけてAIで発展させていくこともあります。

棋聖戦は持ち時間4時間で相性が良く、うれしい。1日制で、普段の対局と同じようなスタンスで臨めます。それは大きいです。

中盤で自分の力が発揮できる展開になれば盛り上げられると思います。秒読み勝負になると精度の差があると思うので、残り時間も差をつけられないようにしたい。自分の読みを信じ、相手が藤井棋聖でも変わらずに強く戦っていきたい。

「正統派同士、第1局が重要」 中原誠永世棋聖

永世棋聖・十六世名人・永世十段・永世王位・名誉王座の5つの永世称号を持つ中原誠永世棋聖(75)に第94期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負の見どころを聞いた。

中原誠永世棋聖
中原誠永世棋聖

佐々木大地七段は以前から有望視されていた実力者。平均してよい成績を挙げている期待の棋士です。見事に決勝トーナメント(本戦)を勝ち上がりましたね。

本格派の将棋を指すイメージがあり、まさに「大地を踏みしめて」という感じですね。今回の五番勝負は非常に楽しみです。

佐々木七段は今期の本戦で、4局すべてが先手番でした。居飛車党の場合、先手番は非常に大きいです。

迎え撃つ藤井聡太棋聖は安定感があります。今年に入ってからの王将戦七番勝負や棋王戦五番勝負、最近の名人戦七番勝負の棋譜は見ています。終盤の強さが抜きんでていて、安定した成績を挙げています。

防衛戦は普通、プレッシャーがかなりありますが、彼は防衛戦もすごい。一回も負けていない。ちょっと信じられないですね。

正統派同士で、対戦成績は2勝2敗。お互いに苦手意識はないでしょうから面白い戦いになりそうです。

五番勝負は早ければ3局で終わってしまう。スタートが大事です。佐々木七段は1局目か2局目、スタートで1勝することが大事。早めに1勝を挙げることで気分も乗ってきます。

五番勝負の期待はフルセット。佐々木七段が早めに勝って、藤井棋聖を慌てさせてほしいですね。

五番勝負の日程

【第1局】6月5日

ベトナム・ダナン「ダナン三日月」

立会人 小林健二・九段

【第2局】6月23日

兵庫県洲本市「ホテルニューアワジ」

立会人 福崎文吾九段

副立会人 大橋貴洸七段

【第3局】7月3日

静岡県沼津市「沼津御用邸」

立会人 青野照市九段

副立会人 勝又清和七段

【第4局】7月18日

新潟市西蒲区岩室温泉「高志の宿 高島屋」

立会人 屋敷伸之九段

副立会人 佐藤紳哉七段

【第5局】8月1日

名古屋市中区「亀岳林 万松寺」

立会人 未定

ABEMA将棋チャンネルでライブ配信

五番勝負の全対局はインターネット動画配信サービス「ABEMA」の将棋チャンネルで対局開始から終局までライブ配信される。視聴は無料。第1局の解説は深浦康市九段と黒沢怜生六段、聞き手は山根ことみ女流二段、和田はな女流1級。検索は「ABEMA 将棋チャンネル」で。


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