天安門事件34年「習氏批判横断幕」の高架橋は厳重警戒

4日、天安門広場の周辺では、観光客の姿とともに治安当局の車両や人員が目立った(三塚聖平撮影)
4日、天安門広場の周辺では、観光客の姿とともに治安当局の車両や人員が目立った(三塚聖平撮影)

【北京=三塚聖平】中国共産党・政府が学生らの民主化運動を武力鎮圧した1989年の天安門事件から4日で34年となった。中国当局は犠牲者の追悼すらも阻止するため、北京市内にある事件と関係する場所で厳戒態勢を敷いた。今春に3期目を本格始動させた習近平政権は当時の武力鎮圧を正当化し、政権への批判を徹底的に押さえ込む姿勢を鮮明にしている。

天安門広場周辺では4日午前、週末を楽しむ観光客とともに大勢の警官や警察車両が目立った。中国では事件に関する報道は厳しく制限され、若者を中心に詳細を知らない人が多い。

広場の西に位置する木樨地(もくせいち)の地下鉄駅周辺では3日夜、無線機を携帯した私服警官とみられる男女が優に100人を超える規模で配置されていた。軍と市民が衝突して多くの死傷者が出た場所であり、追悼活動を警戒した措置とみられる。

事件の遺族グループ「天安門の母」は4日までに発表した声明で、中国政府に「事件の犠牲者遺族に謝罪し、人民に懺悔(ざんげ)する」ことを要求。「政府は人々の心の中の残酷な事実の記憶を消そうとしている」と批判した。声明は116人の連名で、この1年間で7人の遺族が死去したという。

当局は、事件発生日に合わせて政権批判が盛り上がることを封じ込めようとした。昨年10月に「独裁の国賊、習近平を罷免せよ」といった横断幕が掲げられた北京の高架橋「四通橋」からは橋の名前を記した道路標識が撤去され、中国の地図アプリでは橋の名前が検索できなくなった。批判者が集まるのを防ぐためとみられ、4日には橋周辺に配置された多数の警官が通行人の身分証をチェックするなど警戒にあたった。批判の横断幕を再び掲げられないようにするためか、市内の一部の高架橋では警備が増強されていた。

昨年11月に中国各地で若者らによる「ゼロコロナ」政策への抗議デモが相次いだが、参加者の一部が拘束されるなど言論弾圧は厳しさを増している。北京の大学関係者は「ゼロコロナ政策を機に厳格化された学生の管理は弱まっておらず、言論や学問の自由に関する状況は悪化するばかりだ」とため息をつく。

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