トヨタ自動車グループのトラックメーカーである日野自動車と独ダイムラートラックグループの三菱ふそうトラック・バスが経営統合で合意した。経営規模を拡大し、脱炭素に向けた電動化や自動運転など商用車で次世代技術を開発する。
とくに日野はエンジン排ガス不正などで国内出荷を一時停止するなど、経営再建が急務である。親会社のトヨタは日野に外資を受け入れ、技術開発の促進に加えて経営改革も促す構えだ。日野は今回の再編を契機にして、コーポレートガバナンス(企業統治)を徹底的に強化しなければならない。
トヨタとダイムラーが来年中に持ち株会社を対等出資で設立し、日野とふそうがその傘下に入る。持ち株会社は両社を完全子会社化する。トヨタは現在、日野に過半数を出資しているが、グループ再編に伴って日野に対する出資比率は下がり、トヨタの連結子会社から外れる見込みだ。
昨年に日野の排ガスデータの改竄(かいざん)などが発覚し、国内向けの出荷をすべて停止したことで今年3月の連結決算は1000億円を超える大幅赤字に転落した。長年にわたって日野に対し、社長を送り込んできたトヨタの経営責任も問われている。
今回の提携は、1社で日野を支えられなくなったトヨタがダイムラーと組み、経営再建と同時に技術開発でも世界市場で勝ち抜く体制の構築を目指すものだ。世界の自動車業界では次世代技術の開発で合従連衡が加速しており、トラックなどの商用車でも日独連合で存在感を発揮してもらいたい。
長距離走行が求められるトラックを電気自動車(EV)化するには、大容量のバッテリーを搭載する必要があり、重量が重くなって走行性能が悪化するなどの課題も指摘されている。このため、水素を使う燃料電池車(FCV)の方が走行性能は高いとされる。
トヨタグループはFCV技術で世界水準を誇っており、ダイムラーグループもトヨタ系と組むメリットがあると判断したのだろう。アジア市場の開拓でもブランド価値の向上が期待できる。
経営統合で日野・ふそうグループの世界販売台数は、首位の中国第一汽車を上回る見込みだ。経営規模の拡大によってコスト低減も見込める。両社の強みを生かす提携戦略を描いてほしい。