【シンガポール=森浩】中国の李尚福(り・しょうふく)国務委員兼国防相は4日、シンガポールでのアジア安全保障会議(シャングリラ対話)で演説し、台湾問題について「中国の核心的利益であり、外国勢力からの干渉を受けない。台湾海峡の安定を損なっているのは誰か、答えは明らかだ」と述べ、名指しは避けながら関与強化を打ち出す米国を牽制(けんせい)した。
李氏が3月の国防相就任後、大規模な国際会議で講演するのは初めて。オースティン米国防長官は3日の講演で、米国が将来にわたり台湾海峡の平和と安定に関与する考えを強調しており、対抗姿勢を示した形だ。
李氏は講演で、米国との関係について「国交樹立以来、最低水準にある」と述べつつ、対立継続は「世界にとって耐え難い災難になる」と指摘。ただ、関係改善のためには「誠意を示し、中国と一緒に具体的な行動を取る必要がある」と述べ、米国に歩み寄りを求めた。
米国や日本が推進するインド太平洋戦略は「アジアや太平洋で北大西洋条約機構(NATO)のような軍事同盟を推進し、紛争や対立をあおっている」と批判。中国の習近平国家主席が提唱する外交理念「グローバル安全保障イニシアチブ(GSI)」は「寛容な地域協力を推進する」と主張した。
中国が実効支配を強め、フィリピンなどが反発する南シナ海問題については、「(状況は)おおむね安定しており、地域の交流と協力はより強くなっている」と自説を展開した。