韓国の歴史学者で知日派の鄭在貞(チョン・ジェジョン)ソウル市立大名誉教授が日韓の首脳に面白い提案をしている。先の広島での日韓首脳による韓国人原爆犠牲者慰霊碑参拝にヒントを得たのだろうか、今度は韓国で浦項(ポハン)製鉄所(POSCO)を一緒に訪れてはどうかというのだ(ソウル新聞1日付コラム「読史漫評」)。
POSCOは日韓国交正常化(1965年)以降の日韓経済協力のシンボルになっており、今年は完成から50周年。日本から過去の補償的に提供されたいわゆる請求権資金が投入され、八幡製鉄(当時)をはじめ日本の鉄鋼業界が総力を挙げて技術協力し誕生した大プロジェクトだった。
韓国の経済発展を支え今や世界的な大企業になっているが、日韓協力の最大の成功例として評価されてきた。そこで50周年を迎えたのを機に、岸田文雄首相は次の訪韓の折に尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領とともにPOSCOを訪れ祝杯を挙げれば「日韓関係にかかわる国民の歴史認識も肯定的な方向に変化するだろう」というのだ。
日韓外交というと謝罪・反省・補償などいつも大過去(?)の話ばかりだった。特に韓国側では日韓国交正常化以降の〝近過去〟の日本による協力・支援の事実には目をつぶってきた。尹政権下でやっと歴史認識にも前向きの変化が出始めたか。(黒田勝弘)