「なぜ殺されなければ‥元少年は真相明らかにして」 神戸高2刺殺 逃亡11年の末に7日初公判、遺族も参加

自宅に飾られた堤将太さんの写真。好きだったというコーラが並ぶ=5月27日、神戸市北区(弓場珠希撮影)
自宅に飾られた堤将太さんの写真。好きだったというコーラが並ぶ=5月27日、神戸市北区(弓場珠希撮影)

神戸市北区で平成22年10月、高校2年の堤将太さん=当時(16)=が刺殺された事件で、11年にわたる逃亡の末に殺人罪で起訴された当時17歳の元少年の男(30)=愛知県豊山町=の裁判員裁判が7日、神戸地裁で始まる。弁護側は殺意を否認する方針で、刑事責任能力も争点になる見通し。事件には不明な点も多く、男が法廷で何を語るのかが注目される。裁判に参加する遺族も「将太がなぜ殺されなければならなかったのか。真相を明らかにしてほしい」と訴える。

起訴状などによると、男は平成22年10月4日午後10時45分ごろ、神戸市北区の路上で、折りたたみ式ナイフ(刃体の長さ約8センチ)で将太さんの右鎖骨上部などを多数回突き刺すなどし、失血死させたとされる。

将太さんは交際相手だった当時中学3年の女子生徒と路上で会話中に襲われたという。男は将太さんと面識はなかったとみられ、ナイフは事件の6日後に現場近くの側溝で発見された。

発生から約11年となる令和3年8月、難航していた捜査が一気に動いた。現場近くに当時住み、愛知に転居していた男が周囲に「人を殺したことがある」と漏らしたとの情報提供を受け、兵庫県警が殺人容疑で逮捕したのだ。男は当初、「(将太さんが)女子生徒と一緒にいるところを見て腹が立った」という趣旨の供述をし、容疑を認めていたとされる。

神戸地検は刑事責任能力を調べるための鑑定留置を経て刑事責任能力を問えると判断し、昨年1月に殺人罪で起訴。弁護側の求めで実施された精神鑑定でも責任能力があるとの結果が出ている。

少年法適用に憤り

「事件の時に何が起こっていたか、まだ知らないことがあるかもしれない。なぜ息子が殺されたのか。なぜ(男が)11年間も逃げたのか。法廷で真相を明らかにしてほしい」

「息子が訴えたかったこと、どれだけ痛かったかを法廷にいる人全員に考えてもらいたい」と話す、父親の堤敏さん=5月27日、神戸市北区(弓場珠希撮影)
「息子が訴えたかったこと、どれだけ痛かったかを法廷にいる人全員に考えてもらいたい」と話す、父親の堤敏さん=5月27日、神戸市北区(弓場珠希撮影)

初公判を前に、将太さんの父、敏(さとし)さん(64)は産経新聞の取材にこう心境を明かす。

自宅には野球のグラブをつけて照れくさそうに写る将太さんの写真が飾られている。写真を囲むように並ぶペットボトルは、将太さんが大好きだったコーラを友人らが供え物として持ってきてくれたものだ。

事件当時、男は未成年だったため、少年法の規定が適用される。殺人のような重大事件であっても死刑や無期刑は減軽され、公判開始後も匿名扱いが続く見通しだ。

「30歳の男に少年法を適用してどうする」。将太さんの写真を前に、敏さんは憤りを隠さない。司法制度が加害者を守り、被害者をないがしろにしているとの思いばかりが募る。

しかも、事件が平成26年の改正少年法施行より以前に起きたため、未成年時の犯罪は有期刑の上限が15年にとどまる。判決は6月23日の予定だが、敏さんは「科せられる一番重い刑を科してほしい」と訴える。

闘い続ける覚悟

将太さんは家族思いで、気持ちの優しい性格だった。亡くなる前に両親に宛てた手紙には《家族の役に立つようなことをしていきたい。本当にここまで育ててくれてありがとう》と記されていた。

なぜ息子の命が奪われなければならなかったのか-。敏さんは考えれば考えるほど身体の底から激しい怒りがこみ上げる。「息子が訴えたかったこと、どれだけ痛かったか、怖かったかを伝えないといけない」。被害者参加制度を利用し、法廷では男に直接問いただすつもりだ。

ただ、最も苦しんだのは天国にいる将太さんのはず。事件の真相を知り、犯人に厳罰が与えられるまで闘い続けることが父親の使命だと覚悟している。法廷では「冷静に向き合いたい」と敏さんは語った。(弓場珠希)

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