昨年来続く食品値上げに「電気代」という伏兵が現れた。帝国データバンクの調査では7月に値上げを予定する約3400品目のうち2割超が電気代上昇を理由としており、今後さらに割合が高まりそうだ。原材料高の転嫁は一段落しつつあり、値上げの動きは年後半にかけて減速が見込まれるが、大手電力が今月から抜本的な料金引き上げを実施するなど電気代負担は強まりそうで、値上げラッシュが再燃する恐れもある。
帝国データバンクがまとめた5月末時点の調査によると、6月は調味料やカップ麺を中心に3575品目の食品が値上げされ、7月も業務用小麦粉の値上がりを受けたパン製品の価格引き上げなどで既に3485品目の値上げが予定される。年初からの累計値上げ品目数は今夏にも昨年1年間(2万5768品目)を上回り、年間3万品目を突破するのは確実な情勢だ。
こうした中、値上げの理由として徐々に存在感を強めているのが電気代の上昇だ。今年の累計値上げ品目に占める割合は、現時点で7・1%(1779品目)に上っている。オーブンでの焼き上げや発酵などの工程で大量の電力を消費するパン製品への影響が特に大きく、全体の約4割を占める。このほか加工食品や乳製品など、電気代上昇の影響を受ける食品は幅広い。
電気代上昇は、ロシアのウクライナ侵攻や円安を背景にした火力発電の燃料価格高騰によるもの。足元では液化天然ガス(LNG)などの輸入価格は下落傾向にあるが、大手電力7社は過去の高騰による業績悪化を補うため、6月1日に国の認可を伴う電気代の抜本的な引き上げを実施した。
食品の売れ行きは、度重なる価格改定に付いていけない消費者の〝値上げ疲れ〟で鈍化している。原材料高の転嫁がある程度進んだこともあり、足元では価格据え置きや値下げといった昨年来の値上げにブレーキをかける動きも出始めた。順調にいけば値上げペースは年後半にかけ穏やかに減速していくと見込まれる。
ただ、政府が年初から物価高対策で実施している電気代の負担軽減は9月に補助が半減され、それ以降の対応は未定だ。打ち切りとなれば企業や家計の負担感が強まるのは必至。帝国データ担当者は「本来なら値上げの動きが弱まる年末に向け、新たな課題として電気代が台頭する可能性がある」と懸念を強めている。(田辺裕晶)