【ワシントン=坂本一之】エスパー前米国防長官は産経新聞とのオンラインインタビューで、核兵器を含めた米国の戦力で日本を防衛する拡大抑止に関し「米国のコミットメントは強固だ」とした上で、米国の核を日本国内に配備して共同運用する核共有については「必要だとは思わない」と述べた。また、軍事的覇権を目指す中国の核戦力増強には警戒感を示し、米中露の核軍縮協定を構築すべきだと訴えた。
エスパー氏は、日米が拡大抑止の強化のために核の脅威に対抗する机上演習に取り組む「必要はないと考えている」と述べた。日本から机上演習の要請を受けたことはないとの認識を示しつつ、「拡大抑止がどのようなものかについて議論することは悪いことではない」と語り、日本側が理解を深めることは支持した。
米国の核について「他国が米国を攻撃することを阻止する抑止力の最上位にある」と述べ、核攻撃に使う「ミサイルや爆撃機、潜水艦」などを有していると説明。拡大抑止では、米国がその能力を日本を守るために使うことを「潜在的な敵対者」に理解させるとし、核・ミサイル開発を続ける北朝鮮や中国を牽制(けんせい)した。
一方、ロシアが履行を停止した米露間で唯一残る核軍縮合意「新戦略兵器削減条約(新START)」に関し、「ロシアの全面的な履行」再開を求めた。
また「中国は今後10年以上にわたって配備する核弾頭数を大幅に増やそうという野心を持っている」と強調。中国の核戦力増強は「不確実性や不安定化」を招くとし、中国を巻き込んだ米中露の枠組みによる核軍縮が必要だと強調した。
ロシアが核兵器使用をちらつかせて牽制する欧米のウクライナ支援を巡っては、地対空ミサイルシステム「パトリオット」や米主力戦車「エイブラムス」、米製F16戦闘機の供与を米欧が加速させることを重視。「ウクライナ軍の反攻に必要な弾薬を引き続き提供する」ことも求めた。