【台北=矢板明夫】台湾の第2野党、台湾民衆党の党首で、来年1月の総統選挙の有力候補、柯文哲(か・ぶんてつ)前台北市長は3日までに、産経新聞の単独インタビューに応じ「台湾の内政も外交も問題が山積しており、特に中国との関係は最悪だ。早急に解決しなければならない」と訴えた。「米国との関係を大事にしながら、中国と対話を重ね、台湾の民主主義と自由を守る中間路線を歩む」と自らの政治理念を強調した。柯氏は4日から8日まで訪日し、日本の与野党の主要政治家と日台関係などについて意見を交換する。
台湾海峡の軍事的緊張について、柯氏は「突発事件が起きる可能性がある。飛行機や船などが衝突するようなことがあれば、武力衝突に発展し、全世界が巻き込まれる」との認識を示した。武力衝突を避けるために「台湾は自身の防衛力を高めること」と、「中国と対話を重ねること」が重要だと強調した。
台湾の二大政党については「国民党は中国の言うことを聞きすぎている、(与党の)民進党は中国と対抗することばかり考えている」と主張し、中間路線を歩む台湾民衆党は「台湾の自主性を保ちつつ、平和を維持することができる」と強調した。
自らの対中政策について柯氏は「協力、競争、対抗の3つのことを同時に行うべきだ」と主張し、台湾で最近、「米国は信用できない」とする「疑米論」が浮上していることについて「私は反対だ。米国は台湾にとって最も重要な国だ」と強調した。
蔡英文政権については「良いところと悪いところがあり、完全否定はしないが、対中政策はダメだ」と主張した。そのうえで「民進党政権も以前の国民党政権と同じく汚職問題がひどい、権力を私物化する現象が目に余る」と批判した。
対日関係については「安保対話の推進」と「交流制限の突破」を実現したいと述べた。ビザが発給されないため、現在、台湾の総統は訪日できないが、柯氏が総統になれば、数年後、東京大学の大学院に在籍する長男の卒業式に父親として出席したいとしている。「実現できれば、一つの外交上の突破になる」と強調した。
台湾メディア、美麗島電子報が5月29日に発表した世論調査の結果では、次期総統選挙の主な3候補の支持率は、民進党の頼清徳氏35・8%。民衆党の柯文哲氏25・9%、国民党の侯友宜氏18・3%となっている。国民党の候補者指名をめぐる混乱などもあり、4月末まで3位だった柯氏は最近、急上昇し2位になった。
柯文哲
か・ぶんてつ 1959年生まれ。台湾大学医学部卒。著名な外科医で、台湾大教授を経て2014年に台北市長選に無所属で出馬して当選。18年再選。19年に中道政党、台湾民衆党を設立し、初代党主席に就任した。今年5月、総統選挙への出馬を表明した。