メガ3行、中途採用拡大 デジタル対応で薄れる純血主義

メガバンク3行はデジタル化への対応などで中途採用を拡大している=東京都江東区(斉藤佳憲撮影)
メガバンク3行はデジタル化への対応などで中途採用を拡大している=東京都江東区(斉藤佳憲撮影)

三菱UFJ、三井住友、みずほのメガバンク3行が中途採用を拡大している。出戻りのカムバック採用にも力を入れているほか、退職者とのつながりを強化するためアルムナイ(卒業者)ネットワークと呼ばれる交流サイトも立ち上げている。デジタル化やサステナビリティー(持続可能性)の重視など社会の動きが大きく変わる中、新卒からの生え抜きに重きを置く「純血主義」も薄れつつある。

メガバンク3行の中途採用は令和5年度に770人以上を計画する。新卒を含めた全体のうち、中途が約4割を占める。元年度との比較では約6倍の伸びを見せ、3行とも4年度から採用が急増している。

背景には離職者の増加もあるが、デジタル対応などの専門人材が必要となっていることが大きい。銀行業界はオンラインの取引や手続きが広がり、顧客とアプリで直接つながるようになった。このため、業界ではアプリ開発やデジタルマーケティング、データ分析、セキュリティー関連の人材が不足しており、獲得競争が激しくなっている。

特に積極的なのが、みずほフィナンシャルグループ(FG)だ。4年度は銀行や信託などで計326人を採用し、5年度は400人以上を計画。木原正裕社長は「注力領域の人材を増やしたい」と意気込む。

三菱UFJ銀行は5年度に200人の採用を計画する。三菱UFJFGの亀沢宏規社長は「専門性を発揮してもらう方向で進めている」と説明する。

三井住友銀行も5年度に170人を採用する予定。三井住友FGの太田純社長は「もう1回戻ってくる退職者を含め、中途採用を増やしていく」との方針を示す。

メガバンクではカムバック採用にも前向きだ。従来であれば他社への転職者は「裏切り者」という扱いだった。それがいまは、外で経験を積んで、専門性を身につけた人材の出戻りを歓迎する文化に変わりつつあるという。

みずほFGでは4年度に計10人を採用した。人事担当者は「企業カルチャーを知っており、入社後のミスマッチが生じにくい」と即戦力として期待する。

また、みずほFGは3年前にアルムナイネットワークを立ち上げており、約850人が参加する。退職者とつながり、採用だけでなく、新たなビジネスを創出する狙いもある。三井住友銀行は4月、三菱UFJ銀行も5月に交流サイトを相次いで設立した。

これまでメガバンクが重視した純血主義はデジタル化への対応などで限界を迎えている。中途採用は今後もある程度定着するとみられ、人材の多様化がさらに進みそうだ。(黄金崎元)

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