将棋の名人戦第5局で1日夜、藤井聡太六冠(20)が勝利し、最年少の名人位獲得とともに7冠を達成した。快挙の舞台となったのは、長野県高山村の老舗旅館「緑霞山宿 藤井荘」。藤井七冠は数年前に家族旅行で訪れたことがあるといい、「ふじい」の名が結んだ不思議な縁に注目が集まった。
人口約6600人の高山村は長野県の北東部にあり、面積の約85%を森林・原野が占める。山田温泉の渓谷沿いに位置する藤井荘は200年以上の歴史を持ち、森鷗外や与謝野鉄幹・晶子夫妻、菊地寛らも訪れた老舗旅館。鷗外の明治23(1890)年の紀行「みちの記」には「藤井屋」が登場する。
ただ、村としては「高山」といえば岐阜県の飛騨高山を連想されてしまう知名度の低さが課題だった。そこで藤井荘の女将(おかみ)で社長の藤沢晃子さんが4年前に名人戦の開催を提案し、公募制の対局会場に立候補。令和3年の名人戦第4局の会場に選ばれ、今回、2年ぶり2回目の対局会場となった。
村観光協会の落合久男さんによると、藤井七冠の快挙とともに知名度が上がり、山田温泉の旅館への宿泊の問い合わせが相次いでいるという。「『将棋の山田温泉』ということで人気が出るのでは」と期待を寄せた。