サッカー女子日本代表「なでしこジャパン」が復権を期す女子ワールドカップ(W杯)が7月20日から1カ月間、オーストラリアとニュージーランドの9都市10会場で開かれる。女子サッカーは昨年の欧州女子チャンピオンズリーグで9万人超の観客数を記録するなど、欧米で人気急騰。女子W杯での活躍次第では、日本でも再び「なでしこブーム」が巻き起こる可能性がある。13日には代表メンバーが発表予定で、徐々に機運が盛り上がりそうだ。
3大会ぶりの王座へ
女子W杯は今大会から出場チーム数が24から32に増え、3大会ぶりの王座奪還を目指す「なでしこジャパン」は1次リーグC組でザンビア、コスタリカ、スペインと対戦。各組上位2チームが16強による決勝トーナメントに進出する。
女子プロのWEリーグの最終節が10日に行われ、W杯に臨む「なでしこジャパン」メンバー23人はその後に発表される。
関西からは、WEリーグの初代女王、INAC神戸レオネッサ所属の選手のほか、来季から同リーグに参入するセレッソ大阪ヤンマーレディース出身で、現在は海外でプレーする選手もメンバー入りする可能性がある。
成長を実感
確実視されているのが、「なでしこジャパン」で守護神の座を確保しているINAC神戸GKの山下杏也加(27)と守備の要のDF三宅史織(27)だ。山下は昨季、WEリーグの初代MVP(最優秀選手賞)を獲得し、三宅はINAC神戸で主将を務める。ともにコンスタントに「なでしこジャパン」に招集され続け、主要メンバーとしてプレーしてきた。
前回W杯から正GKだった山下は「前回は身体能力で選ばれたと思うが、今はコーチング。コーチングなら(他のGKよりも)勝っているんじゃないかなと思う」と話す。その上で「(前回は)自分で責任を背負ってしまった。PKを止められるGKになりたい」と自然体でW杯に臨みたいとの意向を示した。
一方の三宅も選ばれれば2度目のW杯だが、前回W杯は出場機会に恵まれなかった。それだけに「メンタル的な収穫がほとんどだった」と4年前を振り返り、その後の成長については「攻撃の組み立ては自信を持って言えるようになった」と説明した。
INAC神戸からは、エースストライカーのFW田中美南(29)と右サイドのスペシャリストとして頭角を現してきたMF守屋都弥(26)もメンバー入りする可能性がある。2人は4月の欧州遠征に参加。なでしこリーグで4年連続の得点王となりながら、前回W杯のメンバー入りを逃した田中は「(4年前は)W杯で結果を残すには、力が足りなかったのかなと思う」と謙虚に話す。その上で「誰が入るかは分からないが、4年前とは違う立場。責任がある立場だと思っているので、逆に(監督やチームメートの)信頼感を感じる」という。
一方、守屋は4月の欧州遠征で「なでしこジャパン」デビューを果たした。守備位置が右サイドのMFに変わったことで、スピードや持久力が生かされるようになった。「スピードに乗った中でのクロスを得意にしているので、それを見せたい」と力を込める。
「全部全力で」
セレッソ大阪ゆかりの選手では、宝田沙織(23)=リンシェピング▽林穂之香(25)=ウェストハム▽浜野まいか(19)=ハンマルビー=らが候補に挙がる。
堺市立サッカー・ナショナルトレーニングセンター(J-GREEN堺)を拠点に活動する中学年代のエリート育成組織、JFAアカデミー堺の1期生でもある宝田は近年はDF登録されることが多いが、ユーティリティー性が武器。「自分ではスピードがある方だと思っている。求められたところで自分のプレーを最大限出せるようにしたい」と意気込む。林は当時のセレッソ大阪で主将を務め、同志社大学で学んだ頭脳派MF。「1試合を通してのバランス感覚やカバー能力、人と人をつなげるのはたけていると思っている」と自身の特徴を挙げる。
昨夏のU-20(20歳以下)女子W杯でMVPに選ばれたFW浜野はセレッソ大阪からINAC神戸を経て今年1月に念願の海外移籍。「必要なのは、まず(チームが)勝つこと。途中からの出場が多いので、守備でも攻撃でも全部、全力でプレーしないといけない」と話した。(編集委員 北川信行)