2017年以来、6年ぶりの開催となった野球の国・地域別対抗戦、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)は、誰も予想しなかった新型コロナウイルスによるパンデミックから、各国の日常生活が戻るタイミングで開催された世界大会でした。コロナ禍前のような声出し応援も可能となり、世界中の野球ファンが盛り上がりました。
大会の優勝国でもある日本代表の侍ジャパンは、世界各国の野球ファンから多くの注目を集めました。特に、アジア地域での日本球界への関心は高いものがあります。コロナ禍が収束したこともあり、日本球界の育成システムに興味を持った各国の少年野球チームから、多くの来日希望の連絡があると、関係者から話を聞いたことがあります。春と夏の全国高校野球大会の舞台というだけでなく、プロ野球阪神タイガースの本拠地で、日本球界を代表するランドマークとして多くの国で知られている阪神甲子園球場(兵庫県西宮市)は、野球に興味のある外国人なら、一度は訪れてみたい場所です。
日本のスポーツが世界を魅了したのは、野球だけではありません。高校のバスケットボール部を描いたアニメ映画「THE FIRST SLAM DUNK(スラムダンク)」は、スポーツに興味のない人もリピート鑑賞が続くと言われています。韓国では、まるでK-POPのアイドルのように、作中のキャラクター、三井寿の誕生日を祝う広告が出たり、記念カフェがソウル市内にオープンしたりするほど、人気が続いています。実在する江ノ電踏切(神奈川県鎌倉市)は、東京旅行の新しい名所となりました。
日本政府観光局が2023年5月17日に発表した資料によると、同年4月の訪日外客数(推計値)は約200万人で、22年10月の個人旅行再開以降で最高を更新しました。外国人観光客はそれぞれの理由で日本を旅行先に選ぶのですが、その一つの要因が日本のスポーツということも十分に考えられます。スポーツそのものだけでなく、スポーツに関わるさまざまなコンテンツや施設まで、世界の人々と楽しさを共有できる時代となりました。
近代オリンピックの父と呼ばれるクーベルタン男爵は、言葉が通じなくても相手とのコミュニケーションが可能なスポーツは、世界共通語だと考えました。国籍や宗教、人種を超え、スポーツから始まるすてきなつながりがより多くの人々の間にできれば、平和な毎日を過ごす人が増える気がします。もしかしたら、スラムダンクを見て、日本に来たかもしれない外国人観光客に、笑顔であいさつしてみてはいかがでしょう。
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明世熙(ミョン・セヒ)韓国出身。早稲田大学スポーツ科学研究科修士。びわこ成蹊スポーツ大学講師。福岡ソフトバンクホークスでスタジアムビジネス、新規事業に従事。専門はスポーツを用いた新規ビジネス、スタジアムビジネスなど。
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スポーツによって未来がどう変わるのかをテーマに、びわこ成蹊スポーツ大学の教員らがリレー形式でコラムを執筆します。毎月第1金曜日予定。