「人間万事塞翁が馬」という言葉が思い浮かんだのだが、岸田文雄首相は事態をどう受け止めているのだろう。「広島サミット」をはさんで内閣支持率が急上昇する傾向が見られたのもつかの間、次期衆院選をめぐる自民、公明両党の調整の決裂が連立政権の基盤を揺るがしている。それにしても「東京における自公の信頼関係は地に落ちた」という公明幹部の発言は、およそ友党間で用いる言葉とも思えない。
「塞翁が馬」の故事には、人生何が起きるか分からないし、起きたことが幸運か不運なのかも即断できないといった意味がある。だから、自公連立の危機が幸か不幸かを即断するのは難しい。そんな意味で浮かんだのだが、それは人にもよる。
公明党が通告通りに次期衆院選で東京での自民党支援をやめるとどうなるか。「10増10減」で選挙区の新設もあるため単純には比較できないが、2年前の衆院選の実績から一定の傾向は見てとれる。25の選挙区のうち、自民党が選挙区当選で獲得したのは15議席。このうち票差1万票以内の接戦が3つあった。公明党の支持母体、創価学会の支援は選挙区ごとに万単位に及ぶといわれるだけに、そうなると厳しい。日本維新の会は新設区を加えた全30選挙区に候補者を立てる方針だというので、保守票の動向も読み切れない。そこまで考えると、2万票以上の差があっても安泰とは言い切れない。「応援をもらわなくても勝てる」と強気なことが言えるのは、平成8年、12年の衆院選(東京17区)で公明党の山口那津男氏と激突して勝ち抜いた平沢勝栄氏のように、自力で生き残ってきた人物に限られよう。