【ソウル=桜井紀雄】北朝鮮に1977年に拉致された横田めぐみさん(58)=拉致当時(13)=の北朝鮮にいる娘の金(キム)ウンギョンさん(35)から、めぐみさんの父で2020年6月に死去した滋さんの墓前に自分の名前で花を供えたいとの意向を仲介者を通じて伝えられたと、韓国の拉致被害者家族会代表が2日、産経新聞の取材に明らかにした。
めぐみさんは北朝鮮で韓国人拉致被害者の金英男(ヨンナム)さんと結婚し、ウンギョンさんが生まれた。滋さんは妻の早紀江さんとともに、14年にモンゴルでウンギョンさんと面会している。
拉致被害者の家族は外部との連絡が厳しく管理される。北朝鮮は5月29日、外務次官談話の形で「会えない理由はない」と日韓協議に前向きな立場を表明した。北朝鮮が外交や経済面で行き詰まる中、拉致問題を象徴するめぐみさんの娘を使って対話攻勢の足掛かりにしようとしている可能性がある。
北朝鮮にいる仲介者を通じて5月下旬に意向を伝えられたとするのは、韓国人拉致被害者の家族会代表の崔成竜(チェ・ソンヨン)氏で、独自の情報源からめぐみさんの夫が英男さんである可能性を初めて公表した人物。現在も北朝鮮内に情報ルートを持つ。
崔氏は、5日で滋さんの死去から3年となるのを前に「墓参りもできなく、あまりに切なく思う。胸が痛む。孫のキム・ウンギョンの名前で墓前に花を供えてほしい」とのメッセージとともに、花代として100ドル(約1万3800円)を仲介者から託されたという。崔氏は日本側に伝える手段がなく、在韓日本大使館にメールを送ったが、回答がないと説明した。
横田さんの家族側もウンギョンさんに関する連絡は受けていないとしている。
ウンギョンさんは、韓国にある父方の祖母の墓前にも花を供えてほしいとの伝言を同時に託したといい、崔氏は、韓国にいる英男さんの姉に花代と一緒にメッセージを伝え、祖母の墓前には、姉の手で「金英男・めぐみの子、金ウンギョン」という名前で実際に花が供えられた。