長野県で警察官ら4人が殺害された立てこもり事件は、凶器を持った犯人と対峙(たいじ)する地域警察官に衝撃を与えた。「男が女性を刺した」との110番通報を受け、警察官2人が刃物事案として現場に急行。いったん姿を消した男が猟銃を手に戻り、パトカーに発砲したからだ。
▶近畿地方の駐在所に勤務する知人は「防刃防護衣はいつも着用するが、刃物所持の一報では防弾チョッキは着用しない」と困惑する。知人によると発砲事案や暴力団の抗争には着用指示が出るが、防弾チョッキは万能ではなく、常時着用ともなると重くて動きが緩慢に。犯人を追いかけることもできず、警察官の体がもたないという。
▶「刃物事案を想定し、そこからの展開が非常に速かった」。長野県警の小山巌本部長も悔しさをにじませた。犠牲になった警察官の一人は刃物でも襲われたとみられる。何より犠牲者に哀悼の意を表するが、想定外の事案に日々対処する警察官にも敬意を示したい。