政府が1日示した「こども未来戦略方針」案では、児童手当の支給を高校生まで拡大した一方、16~18歳の子供のいる家庭の税負担を軽減する扶養控除について「関係をどう考えるか整理する」と注釈に記載した。児童手当を拡充しても扶養控除を廃止した場合、手取りが減る家庭が出る可能性がある。見直しの内容次第では少子化対策の効果を打ち消しかねないだけに、政権の覚悟が問われる。
扶養控除は、扶養する親族が16歳以上19歳未満の場合、年収から38万円を差し引き、納税額を少なくする仕組み。鈴木俊一財務相が児童手当を拡充する場合の対応として、「扶養控除との関係を整理する必要があると考えている」と述べ、見直しを示唆していた。
仮に扶養控除がなくなった場合、夫婦と16歳の子1人の家庭で試算すると、年収が500万円なら所得税と住民税で計5万7千円の負担増になる見込み。年収が700万円なら計7万2千円、1100万円なら計11万1千円、1300万円なら計12万2千円の負担増で、月1万円の児童手当をもらうとしても差し引きで得する額は減っていき、高所得世帯では負担が上回るようになる。
このため、野党は「せっかく児童手当を増やすのに扶養控除を見直したら意味がない。むしろ子育て世帯の税負担を減らすべきだ」などと反発している。与党からも「財務省的な発想だ」(自民党閣僚経験者)との声があがる。
政府・与党が年末に決定する令和6年度税制改正に向け、扶養控除の扱いをめぐる議論は難航が予想される。(田村龍彦)