1日の名人戦七番勝負第5局で史上最年少で名人獲得と2人目の7冠を達成した藤井聡太新名人(20)は対局終了後、記者会見に臨んだ。冒頭、「名人」と揮毫(きごう)した色紙を披露した藤井新名人。全8冠制覇に向け「目指せるチャンスを作れたことは幸運」などと述べた。一問一答は以下の通り。
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――名人を獲得した実感は
「感想戦が終わって少しずつ湧いてきた」
――尊敬する谷川浩司十七世名人の最年少記録を更新した思いは
「意識していたわけではないが、谷川先生の記録は素晴らしいと思っていた。結果として更新できたことはうれしい」
――羽生善治九段以来の7冠達成となった
「羽生先生の全冠制覇(当時は七大タイトル)は特別なもの。そこに並べた意識ではないが、名人を獲得できたことはうれしい」
――8冠に向けては
「6月から(ヒューリック杯)棋聖戦、王位戦と防衛戦が開幕する。どちらも佐々木大地七段という強い相手。しっかり準備して臨みたい。王座戦は挑戦を意識する立場ではないが、少しでも上に行けるよう頑張りたい」
――師匠の杉本昌隆八段には何と報告するか
「(少し考えて)順位戦C級1組で同じクラスになったとき、師匠が昇級して自分は届かなかった。50代で昇級するのは素晴らしい。師匠の姿を見て、頑張ろうという気持ちになった。その姿を見ることができたことが今につながっていると思う」
――名人は「一芸を極める」という用語でもあるが、将棋でその域に達していると思うか
「名人は特別な重みがある。その域に達しているとは思っていない。名人の言葉にふさわしい将棋が指せるように、と思っている」
――全8冠制覇について、どう考えているか
「まだまだ遠いものと思っている。ただ、それを目指せるチャンスを作れたことは幸運なことと思う。それを生かして、少しでも(8冠に)近づけるよう頑張りたい」
――最年少で7冠と名人。どのような景色が見えたか
「名人戦は他のタイトル戦と比較して、持ち時間が9時間と長い中、読みを入れて指すことができ、その点では収穫のあるシリーズだった」
――名人戦は5局とも棋王戦と違い、力将棋だった。それを制した気持ちは
「名人戦は早くから定跡から外れ新鮮だった。その結果、うまくいったところと、そうでなかったところがあったことが分かった。指していて楽しい将棋が多かった」
――これからどのような高みを目指すのか
「これからも変わらず、強くなることが第一の目標。(指し手の)精度を高めていきたい」
――幼い頃からの夢だった名人を獲得したことについては
「名人という称号には子供の頃からあこがれの気持ちを抱いていた。獲得できたことは感慨深い。しかし、それで終わりではなく、先があるので、しっかりと見据えてやっていきたい」