知人の台湾人医師が最近、スイスのジュネーブから戻ってきた。「台湾の支持者が増えたことを実感した」と上機嫌だった。
この医師は、台湾の世界保健機関(WHO)加盟を推進する民間団体の幹部で、約20年前から、毎年5月のWHO総会に合わせてスイスに赴き、会場近くで宣伝活動を行っていた。
新型コロナウイルス禍で最近3年は行けなかったが、今年は議員、学者、欧州在住の台湾人ら約百人の仲間とジュネーブの街を練り歩き、台湾への支持を訴えた。例年と比べ、「頑張って」「応援しているよ」などと声をかけられることが多かったという。
偶然にも、街角でWHOのテドロス事務局長を見かけた。デモ隊はテドロス氏を囲み、「なぜ台湾を拒否するのか」「WHOに入れてください」と陳情すると、テドロス氏は「多数決で決めていますから」とタジタジになっていたという。
今年のWHO総会では、台湾と外交関係がある国など10カ国が「台湾のオブザーバー参加」への支持を表明した。しかし「台湾は中国の一部」と主張する中国が反対し、今年も採決の結果、否決されたという。
この医師は「政治を理由に2300万もの台湾人の健康をないがしろにすることはおかしい。来年もジュネーブに行く」ときっぱり言った。(矢板明夫)