【ワシントン=坂本一之】米下院は5月31日、米国債のデフォルト(債務不履行)回避に必要な連邦政府の債務上限を一時的に停止する法案を与野党の賛成多数で可決した。法案の審議は上院に移り、政府の資金が枯渇するとされる6月5日までの可決を急ぐ。法案は上院での可決後、バイデン大統領の署名で成立する。
野党・共和党が多数派を握る下院での採決は賛成314、反対117。共和党の71人が反対した。
法案は連邦政府の借入限度額である債務上限について、現在の上限31兆4千億ドル(約4300兆円)の適用を2025年1月まで停止する内容。24年秋の次期大統領選後まで債務上限問題は解消することになる。
バイデン氏と共和党のマッカーシー下院議長との合意に基づく法案は、軍事費を除く歳出を24会計年度(23年10月~24年9月)で23会計年度と同水準に据え置き、25会計年度で1%の増額として抑制する。
共和党側の要求を受けて低所得者向け食料支援の適用を厳格化。低所得者向け公的医療保険「メディケイド」の利用要件の厳格化については民主党の反対で見送った。
中立的な立場の議会予算局(CBO)は5月30日、同法案は33年度までに1兆5千億ドルの財政赤字削減効果があるとの試算を公表した。
ロイター通信によると、民主党が多数派の上院では、共和党トップのマコネル院内総務が5月31日、法案は早ければ6月1日に上院に送付されるとの見通しを示し、同日か2日の採決に期待を示した。ただ、共和党内には上院で法案の修正を求める声もある。
法案審議を巡っては、バイデン氏との交渉でマッカーシー氏が譲歩しすぎたなどとして共和党保守強硬派が罷免要求を示唆する動きも出た。マッカーシー氏は合意内容に関し「米史上最大の歳出削減」と強調し、支持に回るよう呼びかけていた。
債務問題に直面するバイデン米政権、中露の「情報戦」利用を警戒