偵察衛星保有にかける金正恩氏、2回目の発射へ 中露も援護か

「非常設衛星発射準備委員会」を現地指導する北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記(奥中央)。右は「軍事偵察衛星1号機」とみられる=16日(配信元が画像の一部を加工しています、朝鮮中央通信=共同)
「非常設衛星発射準備委員会」を現地指導する北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記(奥中央)。右は「軍事偵察衛星1号機」とみられる=16日(配信元が画像の一部を加工しています、朝鮮中央通信=共同)

【ソウル=桜井紀雄】北朝鮮は「最優先課題」として、軍事偵察衛星の開発を急ピッチで進めてきた。事実上の弾道ミサイル発射である31日朝の偵察衛星の打ち上げでは、早々に「失敗」を発表したものの、今後、早期に2回目の発射を行うとしており、偵察衛星保有にかけた強い意思に揺らぎは見られない。

「絶対に放棄することも変えることもできない必要不可欠な先決的課題」。金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党総書記は4月、「軍事偵察衛星1号機」を開発してきた国家宇宙開発局を現地指導した際、こう強調した。

北朝鮮は2021年の党大会で国防5カ年計画の五大重点目標の一つに偵察衛星開発を掲げた。米本土を狙う大陸間弾道ミサイル(ICBM)など多様な攻撃手段を開発してきたが、標的となる米韓両軍の動きを正確に把握する「目」の役割をする観測手段を持っていなかったからだ。

軍事偵察衛星について、北朝鮮高官は、米韓の「危険な軍事行動をリアルタイムで追跡、監視するのに不可欠だ」と主張した。

北朝鮮は16年の「人工衛星」打ち上げなどでは「地球観測衛星」打ち上げといった「平和利用」を強弁してきた。だが、偵察衛星に関しては「自衛力強化」を主張しながら、米韓に対抗した軍事目的であることを隠そうともしていない。

「衛星」打ち上げと称しても弾道ミサイル技術を使った発射を禁じる国連安全保障理事会決議に違反する。ただ、常任理事国の中国とロシアが北朝鮮を擁護し、対北制裁が強化される見込みはない。中露と米国の対立が深まる中、北朝鮮は国際社会での中露の援護を見越して偵察衛星を含め、核・ミサイル開発を加速させてきた現実がある。

金氏は「連続して数個の偵察衛星を多角配置する」よう指示している。今回の打ち上げ失敗に左右されることなく、北朝鮮は、中露を後ろ盾に、軍備増強に突き進んでいくとみられる。

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