ゆがむ巨大メディア④
東京・砧にあるNHK放送技術研究所では毎年5~6月、研究成果を一般向けに展示する「技研公開」を行っている。スーパーハイビジョンと呼ばれた8Kも、古くは壁掛けテレビもここで、「未来のテレビ」の技術として公開された。
「技研が果たしてきた役割は非常に大きい。しかし今、技研がなければ日本の映像技術がだめになるわけではない。もう役割は終えていると思う」。そう話すのは、筑波大准教授(メディア工学)の掛谷英紀だ。
映像情報メディア学会で立体メディア技術研究会の委員長を務める掛谷は「映像技術の中心がもうテレビではなくなっている」と指摘。「独立法人化した研究機関に、国やディスプレー関係のメーカーが出資するなどして、受信料によらない仕組みを作るべきでは」と提案する。
掛谷の研究室では、NHKだけを受信できないようにする機器「イラネッチケー」を開発したこともある。「今まで必要だったからといって、これからも必要とはかぎらない。メディア状況が変化する中で、NHK自体も本当に必要なのか」と掛谷は問う。