ゴールデンウイーク期間中の5月4日、阪神戦を取材するため、甲子園球場(兵庫県西宮市)を訪れた。試合を球場で生で観戦するのは昨年7月以来だった。過去3年、新型コロナウイルス禍で制限が多かったが、今季は開幕から声を出しての応援も解禁となっている。観衆は満員に近い4万2596人。好プレーに沸き上がる歓声、トランペットで鳴り響く選手のヒッティングマーチ、阪神の勝利でこだまする六甲おろしの大合唱…。応援スタイルがコロナ前の状態に戻りつつあることを改めて実感した。
新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが5月8日から5類に移行されたことに伴い、甲子園球場でも9日の試合から感染症対策が一部緩和され、入場時の検温やアルコール消毒、試合終了後の時差退場などが不要になった。だが、制限が継続されているのがジェット風船を使った応援の禁止だ。
ジェット風船の応援は甲子園の名物の一つ。七回裏のラッキーセブンの攻撃前、スタンドを埋め尽くしたファンが六甲おろしの音楽に合わせて大歓声を上げながら、空に向かって風船を打ち上げる。爽快感とともに、ファンが一体感を得られる瞬間でもある。七回表に相手チームが攻撃をしている最中から風船を膨らませ始め、あちらこちらで破裂してしまう音が聞こえるのも一興だった。
今年1月、政府の大規模イベントの制限緩和の方針を受け、日本野球機構(NPB)の井原敦事務局長は鳴り物応援やジェット風船の解禁について「そうなっていくと思うが、専門家に確認して進めていきたい」と話していた。すでに鳴り物応援は復活しているが、各球団とも飛沫(ひまつ)感染のリスクの観点からジェット風船の解禁には踏み切れていない。屋外でのマスク着用が個人の判断となってからまだ2カ月半。ジェット風船は時期尚早ということだろう。