【シンガポール=森浩】マレーシア海事当局は31日までに、許可なく領海内で停泊していたとして中国船籍の貨物船を拿捕(だほ)した。積み荷から砲弾や金属などが発見され、太平洋戦争中に日本軍の攻撃で沈没した英国艦艇から不法に引き上げたものとみられている。
海事当局によると、貨物船は32人の乗組員を乗せており、5月28日にマレーシア南部沖で有効な許可を得ずに停泊していた。マレーシア警察が5月上旬、南部ジョホール州の私有地で複数の砲弾を発見しており、何者かが海底から引き上げたとみて、捜査を続けていた。
付近の海域では1941年12月、日本軍の攻撃によって、英海軍の戦艦「プリンス・オブ・ウェールズ」と巡洋艦「レパルス」が沈没した。沈没船からの金属引き上げについて、英国防省は犠牲者への「冒涜(ぼうとく)だ」と非難している。
英BBC放送(電子版)などによると、太平洋戦争前に沈没した船舶の鋼材は、含まれている放射線量が低く、医療機器などに転用できる。このことから沈没船から無断で金属が回収される事案が絶えないという。