与野党は31日の参院憲法審査会で、憲法に規定されている「参院の緊急集会」について憲法学者3人から意見を聴取した。公明党は緊急集会の活用に前向きな識者の招致に尽力し、国会議員の任期延長を可能にする憲法改正が必要だと強く主張する衆院側とは一線を画した。党内の見解の相違が解消されなければ、改憲論議の進展にブレーキがかかる可能性がある。
参院が衆院解散後の緊急事態に国会機能を代行する緊急集会をめぐっては、総選挙を経て特別国会までの衆院不在の70日間に限られるとの見方がある。このため、衆院公明は憲法審で自民党や日本維新の会などと足並みをそろえ、緊急時に限って国会議員の任期延長を可能にする改憲の必要性を訴えてきた。
しかし、参院公明は緊急集会の活用をより重視する立場だ。「70日が過ぎた段階で参院議員が国民にとって必要な法案や予算案の審議を打ち切れるかというと非常に困難だ」。31日の参院憲法審で、公明が参考人に推した京都大の土井真一教授はこう述べ、70日を超えても開催は可能だとの見解を示した。
公明の西田実仁参院会長は私見と断りつつ、「基本は緊急集会と(衆院選の投開票を延期する)繰り延べ投票で対応しつつ、極めて例外的な場合のみ、議員任期延長などを認めるかどうか慎重に検討すべきだ」と強調。認める場合でも「緊急集会で議決を行い、民主的正当性を担保すべきだ」とクギを刺した。
参院公明は改憲に慎重とされる参院議員の山口那津男代表の意向が反映されやすいとの指摘もある。衆院側とのズレを認める参院公明関係者は「衆院が勝手にやるなら参院も言うことは言わせてもらう」と冷ややかに語る。
衆院側で議員任期延長論を主導する北側一雄副代表が当選を重ねてきた大阪16区をめぐっては、公明が31日、次期衆院選で公認候補を山本香苗参院議員に差し替えることを発表した。
このまま衆参間のズレが修正されず、党憲法調査会長も兼ねる北側氏の影響力が弱まれば、順調だった改憲論議が足踏みする可能性も否定できない。(児玉佳子、内藤慎二)