中国は、米国にとって敵か味方か。英国の調査会社YouGov(ユーガブ)によれば、本年2月には「敵」とみなす米国人が43%に上り、バイデン政権発足後で最高を記録した。「非友好的」と認識する米国人も31%、あわせて74%に上ったのに対し、「友好的」は10%、「同盟国」は4%に過ぎなかった。同月に発覚した中国の偵察気球の米領空侵入事件の影響が大きかっただろうが、それだけではあるまい。トランプ政権発足直後の2017年4月には、「敵」は8%、「非友好的」も26%に過ぎず、「友好的」がトップで35%、「同盟国」も6%いたのだから、この6年間で米国人の対中感情は劇的に変化している。
米国世論の変化を筆者なりに表現すれば、米国人の中国観が「フレネミー」から敵へとシフトしたということだ。「フレネミー」とは、味方(フレンド)と敵(エネミー)を掛け合わせた造語だ。オックスフォード英語辞典によれば、「根本的な嫌悪感やライバル関係にもかかわらず、友好的」「味方と敵の特徴を併せ持つ」とされる。
第二次世界大戦後の歴史を振り返ると、米中関係は複雑な変転を辿ってきた。朝鮮戦争では敵として直接戦火を交えたが、中ソ対立後にはソ連を念頭に劇的な接近を遂げた。ソ連崩壊後は、イデオロギー上の相違は後景に押しやられ、米中のビジネス関係が深まり、中国の大国化に伴ってその存在感も高まった。結果として米国世論に、中国を敵と味方の中間的な存在、すなわち「フレネミー」と捉える認識が広まった。
実際、社会的影響力がある人々が中国を「フレネミー」と呼んだ例は、いくつも挙げることができる。著名な国際政治学者のイアン・ブレマー氏も「米国と中国はフレネミーである」とオバマ政権期に表現している。他にも実業家で2020年大統領選に民主党から立候補しようとしたトム・スタイヤー氏、ノースウェスタン大学のジョセフ・マークス教授、ニューヨーク・タイムズ紙のマイケル・クロウリー記者らがいる。