中国、シンガポールでの米中国防会談を拒否 米側に通告

米国と中国の国旗(AP=共同)
米国と中国の国旗(AP=共同)

【ワシントン=坂本一之】米国防総省は29日、6月2~4日にシンガポールで開かれるアジア安全保障会議(シャングリラ対話)に合わせて要請していたオースティン米国防長官と中国の李尚福(り・しょうふく)国務委員兼国防相の会談に関し、中国側が拒否したと明らかにした。米国による李氏への制裁を問題視した可能性がある。

バイデン米政権と中国の習近平政権は5月に入って閣僚級などで対話を進めているが、国防当局のハイレベル会談は中断している。

国防総省のライダー報道官によると、5月上旬に要請したシンガポールでの会談を中国から断る連絡があった。

ライダー氏は「米国防省は競争が衝突に発展しないよう、米中国防当局間のオープンなコミュニケーションを維持する重要性を強く信じている」と指摘。今後も中国に対して対話を呼びかける姿勢を示した。

米国が2018年にロシアからの武器調達を巡り李尚福氏を制裁対象にしていることについては「会談を妨げるものではない」とした。

米中間の対話は米領空に侵入した中国の偵察気球を米軍が2月に撃墜したことを受けて冷え込んだが、バイデン政権は安定した米中関係の構築を目指して対話の維持を重視。今月10~11日にサリバン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)と中国の外交担当トップ、王毅(おう・き)共産党政治局員がウィーンで会談した。

さらに26日閉幕のアジア太平洋経済協力会議(APEC)貿易相会合で訪米した中国の王文濤(おう・ぶんとう)商務相と、レモンド米商務長官や米通商代表部(USTR)のタイ代表がそれぞれ会談している。

ただ国防当局間のハイレベル対話は中断しており、台湾への軍事圧力や東・南シナ海で高圧的な海洋進出を続ける中国が対話拒否を続けていることに対し、米国防総省高官は懸念を示している。

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