北朝鮮による拉致被害者、横田めぐみさん(58)=拉致当時(13)=の父、滋さんが亡くなってから来月5日で3年となるのを前に、母の早紀江さん(87)が30日、報道陣の取材に応じた。最近は心臓の不調から入院や治療を重ねたことも明かし、「支えはめぐみちゃんを助け出すという思いだけ」と早期解決へ切実な思いを訴えた。
3月、自宅で朝食をとった後、視界が真っ白になり、激しい動悸に襲われた。「死ぬというのはこういうことか」と頭をよぎったが、すぐさま「神様、困ります。まだ頑張る力をください」と祈ったという。徐々に回復し、病院で過労性の狭心症と診断された。直後と4月に入院、医師から無理は禁物と忠告された。
「元気だと思っていたがそうではなかった。今は少し、恐怖の中にいる」。早紀江さんは30日の取材で自身の体調をそう表現した。今年2月、滋さんの死去時と同じ87歳になった。
めぐみさんは昭和52年11月、新潟市内の中学校から帰宅途中に北朝鮮に拉致された。早紀江さんは滋さんと二人三脚で救出運動の先頭に立ってきたが、45年以上が過ぎた今も再会はかなわない。自宅に置く滋さんの遺影に、「進歩がないよ。どうしたらいいんだろうね」と声をかける日々だ。
岸田文雄首相は今月27日、日朝首脳会談実現のための「ハイレベル協議」の実施に言及、北朝鮮側は「日本が関係改善の活路を模索しようとするなら、朝日両国が会えない理由はない」などと反応した。だが、拉致問題については「解決した」と従来の主張を繰り返している。
早紀江さんは岸田氏の言動に「以前より積極性を感じる」と期待。北朝鮮側の見解にも「少し柔らかい言い方だ」との見方を示し、「皆が平和になる方向に向かっていってほしい」と願った。