<嫌われる雨に作詩家助けられ>。小紙の川柳欄で見つけた一句である。確かに雨を題材にしたヒットソングは数多い。幼いころ一番のお気に入りの雨の歌は、北原白秋作詞、中山晋平作曲の「あめふり」だった。「ピッチピッチ チャップチャップ…」の響きがなんとも言えず心地よかった。
▼ただ迎えに来てくれたかあさんが持っていた「蛇の目」にはピンとこなかった。「本物」を知ったのは、歌舞伎を観(み)るようになってからだ。傘を開くと大小2つの同心円が蛇の目に見えることから名付けられた。
▼傘は3千年以上前にエジプトで発明されたとされる。竹の骨に和紙を張った和傘は6世紀ごろ、中国から入ってきた。江戸時代に入って蛇の目傘が登場する。「あめふり」が発表された大正14(1925)年ごろはまだ普通に使われていたようだ。