大規模な再開発が進む東京都心で、エリア内の遊休地にカフェを設置する動きが続いている。三菱地所レジデンスが門前仲町(江東区)でオープンさせたのに続き、野村不動産も新橋(港区)で開店させた。いずれも女性客を中心に「居心地がいい」などと好評だ。これまではコインパーキングにする程度だった遊休地になぜ、カフェを相次いでオープンさせたのか。そこには大手デベロッパーに求められる役割の変化が見え隠れする。
女性に好評
東京メトロ東西線・都営大江戸線の門前仲町駅から東に徒歩2分。木造のテラスがあるカフェが姿を見せる。三菱地所レジデンスの「MONNAKA COFFEE(モンナカ コーヒー)」だ。
店内は多摩産の木材をふんだんに使用し、1階にはカウンター席のほか、地域の情報を発信する掲示板やチラシなどを置くスペースもある。2階はテーブル席だ。
ブレンドコーヒーは715円と割高な感じもするが、担当する同社街開発事業企画二部の乙田まりさ主任によると、「店内には電源やWi-Fiも完備されており、長時間の利用を想定している」と説明する。
人気スイーツのカスタードクリーム入りのクロワッサン「サークロ クレームブリュレ」(440円)は連日、売り切れ必至だという。乙田氏によると「利用者の過半は20~30代の女性」だという。
一方、JR、東京メトロ、都営地下鉄が乗り入れる新橋駅から北西に徒歩3分にオープンしたのが、3階建ての「新橋ぷらっとホーム(しんぷら)」。1階が野村不動産のカフェ「ピアッザ」で、木材をふんだんに使った店内にはカウンターとテーブル席がある。ブレンドは400円、レトロプリン(450円)などスイーツのほか軽食もある。
同社プロジェクト開発三部の江浦智昭副部長によると、「利用者は男女半々」と語り、「サラリーマンの街」として知られる新橋にしては女性客が多いようだ。
再開発後も見据えて
この2つのカフェには多くの共通点がある。
まず、都心のオフィス街にほど近いという立地。そして今まさに都市計画の策定中で、開発の中身が未定という点。さらに両社はあくまでも「事業協力者」にとどまり、開発を主導する立場にはないということだ。
カフェの位置づけも「SNSなども活用して地域の情報発信の拠点にする」「イベントを通じて住民の交流を促進し、再開発後のエリアマネジメントにもつなげる」と同様だ。そして月1回のペースで「バリスタによるラテアートセミナー」などのイベントを開き、住民の交流を促している。また、建物も環境に配慮するために木造で、再開発後にはこれらの木材をできる限り再利用する考えも共通する。
こうしたなかで乙田、江浦両氏が特に強調するのが、「再開発後のエリアマネジメント」。住民や事業主、地権者ら関係者が一体となり、街に賑わいや魅力を作り出すなどして、エリアの人気やブランド価値を向上させる取り組みのことだ。
だが都内であっても、高齢化の影響を受けて地元の店舗などの存続が年々厳しくなる一方、単身者を中心とした新住民は増加傾向にある。必然的に住民同士、さらには住民と街の関係は希薄になる。これらを見据え、開発前から地域の交流や情報発信を行って再開発後につなげるために「カフェがいい」という結論になったのだという。
両社だけでなく多くのデベロッパーは、「以前は建物を作ったり、開発が終わったりすれば役割は終わっていた」とした上で、「今は、行政などからも再開発後のエリアマネジメントを求められる」と説明する。
今後、再開発エリアの遊休地にカフェは定番になるのかもしれない。(福島徳)