共犯医師から「1時間で終わる仕事」、報酬は130万円 ALS嘱託殺人の元医師初公判

難病のALS(筋萎縮性側索硬化症)の女性患者への嘱託殺人などの罪に問われ、京都地裁で29日に行われた元医師の山本直樹被告(45)の初公判で、検察側は共犯として起訴された大久保愉一(よしかず)被告(45)が、事件の約3カ月前に女性とSNS(交流サイト)で接触したことなど、経緯を明らかにした。

検察側の冒頭陳述によると、被害者の林優里(ゆり)さん=当時(51)=は平成24年ごろにALSを発症し、その後寝たきり状態となった。検察側は「(林さんは)自殺願望を抱くようになり、30年4月ごろからはツイッターで積極的安楽死を望むALS患者として投稿を行っていた」と説明した。

安楽死について肯定的意見をツイッターで発信していたのが、山本被告の共犯として起訴された大久保愉一(よしかず)被告(45)だった。大久保被告は令和元年8月、「安楽死させることができる」という内容のメッセージを林さんに送信。その後は「山本」と名乗り、病死に見せかけて安楽死させる方法を説明したり、介護の状態などを質問したりするメッセージを送っていた。さらに、事件が露呈するのを警戒したためか、林さんにメッセージの削除を求めていた。

検察側の説明では、犯行に使う薬物などを購入した大久保被告は、報酬の振込先として山本被告名義の銀行口座を林さんに伝えた。同年11月中旬には、山本被告に「京都で1時間で終わる仕事がある」とメール。数日後、山本被告は計130万円の現金が振り込まれているのを確認した。

これに対し弁護側は冒頭陳述で、「山本被告は林さんとのやりとりは一切関わっていない」として無罪を主張。両被告には長年の関係があり、「山本被告は大久保被告の頼みを聞くしかない状況だった」とし、京都に一緒に行っても何をするのか具体的に聞かされていなかったと指摘した。その上で嘱託殺人罪について「山本被告の犯罪ではない」と訴えた。

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