「核の無法時代」に戦う姿勢を 京都「正論」懇話会で櫻井よしこ氏が講演

【第70回京都「正論」懇話会】第70回京都「正論」懇話会で講演するジャーナリストの櫻井よしこ氏=25日午後、京都市中京区(渡辺恭晃撮影)
【第70回京都「正論」懇話会】第70回京都「正論」懇話会で講演するジャーナリストの櫻井よしこ氏=25日午後、京都市中京区(渡辺恭晃撮影)

5月25日にホテルオークラ京都(中京区)で開かれた京都「正論」懇話会の第70回記念講演会で、ジャーナリストの櫻井よしこ氏が「激動する世界と日本の進路」と題して講演した。ロシアのウクライナ侵略や中国の軍事力強化で「核の無法時代に入った」と櫻井氏。世界情勢が混迷を極める中、日本が進むべき道は何か、約1時間半にわたり熱弁した。講演趣旨は次の通り。

中国への遠慮

戦争当事国のウクライナからゼレンスキー大統領が参加した先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)は歴史に残る重要な分岐点になる。このサミットを次に生かすことが自由陣営の強化につながる。

サミットではさまざまな声明が出た。岸田文雄首相が最も力を入れ、G7として初めて核軍縮に焦点をあてた「広島ビジョン」ではロシアについては手厳しく言っているものの、肝心の中国に対しては批判の矢を放つことができていない。

また首脳声明では経済安全保障に関し、関係を断つ「デカップリング(切り離し)」ではなく、「デリスキング(リスクの低減)」に基づいて対応するなど、中国に対して遠慮が目立つ。

本当に中国に渡してはいけない技術は何なのか。日本はやすやすとデリスキングに乗らずに、厳密に線を引くことでデカップリングを定義していくべきだった。わが国が本当に中国と向き合う姿勢をサミットで見せることができたかは不透明だ。

きれいごとはいらない

バイデン政権が、米国製F16戦闘機の欧州同盟国によるウクライナへの供給を容認したことを機に、ウクライナでの戦争のステージは一段上がった。武器供与の拡大でロシアが核を使うかもしれない。今や核が急速に増加しかねない、「核の無法時代」に入った。

岸田首相は「核なき世界」を目指すと言ったが、どうやって目指すのか。日本はきれいごとを言うだけではいけない。ウクライナ支援に関しても米国が戦闘機の供与を容認する一方、日本は自衛隊のトラックや非常用糧食を提供することとなったが、世界と比較して物足りない。古くなって廃棄する予定の砲弾をなぜウクライナに渡せないのか。すべては日本の平和憲法が故のことだ。

改憲しかない

パシフィズム(平和主義)から目を覚ましたドイツは、ウクライナに対してヘルメットの支援から戦車の支援へと変化した。岸田首相も目を覚まし、平和主義を主張するとともに、憲法改正をして戦う姿勢も示すことが必要だ。

米国はレーガン大統領時、中距離核戦力全廃条約をソ連と結んだ。これは米国の中距離ミサイルが、先行して配備されていたソ連のミサイルと均衡して、初めて全廃につながった。つまり核を無くそうとするのなら、相手が持つ核に匹敵するものをこちら側も持たなければならない。

そのため、核を無くすことを本気で目指すなら、まず、日本が核武装をしなければならない。他国の核に依存しながら国際社会に核を無くそうと訴えることには意味がない。ロシア、中国、北朝鮮の核の脅威に十分対応できる姿を見せることで、世界に対して日本の覚悟を示すこととなり、この時初めて「核なき世界」の潮流の先頭に立つことができる。

自民党の総裁である岸田首相に憲法改正をやり遂げさせるためにも、国民の声で岸田首相の背中を押すことが大事だ。(木下倫太朗)

さくらい・よしこ 昭和20年、ベトナム生まれ。ハワイ大を卒業後、「クリスチャン・サイエンス・モニター紙」東京支局に勤務。平成19年にシンクタンク、国家基本問題研究所を設立し、国防、外交、憲法、歴史問題など幅広い分野で提言を行う。著書に「迷わない。」「日本国の復権」など。大宅壮一ノンフィクション賞、菊池寛賞などを受賞し、平成22年には、第26回正論大賞を受賞した。

「改憲し、核なき世界の先頭に」 櫻井よしこ氏が講演




会員限定記事会員サービス詳細