(イラクのフセイン大統領のように)穴蔵から出されて絞首刑になったり、(リビアのカダフィ大佐のように)下水管で見つかって射殺されたり、という想定もありえた。独裁者の末路はやはりあわれだと、言われていたかもしれない。まさか国際舞台に、笑顔で現れる日が来るとは。
▶内戦で国際社会から孤立していたシリアが、12年ぶりにアラブ連盟に復帰した。アサド大統領はサウジアラビアで開かれた首脳会議に出席し、サルマン皇太子の抱擁を受けた。ウクライナのゼレンスキー大統領が広島訪問の直前、支援を求める演説を行った会議だ。
▶民主主義の尺度で正反対の二人を同時に迎える神経に驚き、気が付いた。自由や民主主義を最上位に置く西側は世界ではむしろ少数派で、中国やアラブ諸国のような実利重視が多数派なのだと。アサド氏の復活という不都合な真実を、直視しなくてはならない。価値観の異なるパラレルワールドが、輪郭を現しつつある。