世論輿論

LGBT法案② 見直しが始まった欧米に追随すべきなのか

あなたはどう考える?

性的少数者(LGBT)への理解増進を図る法案は、与党に続き、日本維新の会と国民民主党も26日に独自の修正案を衆院に共同提出するなど、超党派議員連盟による当初案に異論が噴出。さらに修正案であっても「不十分だ」との声が目立っている。

法案を巡る議論がこれほど混迷を極めている理由の一つに、そもそもLGBT法案は差別の歴史の反省から生じた欧米の価値観が根底にあり、日本にはそのような歴史はないという事実がある。早期の法案成立を求める人たちは、先進7カ国首脳会議(G7サミット)参加国の中で、日本だけが後れをとっている点を強調するが、そうした比較には違和感を抱いてしまう。

では、LGBT対策の「先進国」である欧米の現状はどうだろうか。現在の法案議論で懸念されている「性自認」の行き過ぎた尊重による弊害が露呈し始めている。特に性観念が不安定な子供たちへの対応だ。

麗澤大の高橋史朗特別教授(臨床教育学)によると、米国では、フロリダ州が昨年3月、幼稚園や小学校3年生まで性的指向・性自認教育を禁止する州法を制定。これが他の10州に広がったほか、19州で「反LGBTQ法」が制定された。これらは子供を持つ保護者らの懸念を受けたものだ。

また、英国で性転換手術をした子供は2009年には77人だったが、19年には2590人にまで急増してしまった。英国唯一の児童ジェンダー医療機関が今春閉鎖され、ホルモン治療・外科手術などを中止したという。

「米駐日大使は内政干渉」

先週の小欄開始以降、読者の方々から多数寄せられた意見の中に、こうした現状を踏まえ、次のような指摘があった。

小学生の娘を持つ女性は、公衆トイレや浴場における被害増加を懸念した上で《(性の多様性なども含めて指導する)「包括的性教育」の影響で(性転換などをした)子供に「医療による性加害」が広がっており、英国は正常化に舵(かじ)を切っている。それなのに日本が周回遅れで(欧米が当初目指した方向に)進むのはいかがなものか》と疑問を抱く。

また、東京都内で女性の権利保護を訴える団体幹部も《先行してきた欧米は、まさに引き返しているのに今から後追いするのか》と危機感をあらわにする。

一方、欧米で見直しが進む現状を随時取り上げている米FOXテレビのニュース番組が先日、ジャーナリストの我那覇真子(がなはまさこ)さんにインタビューした。

エマニュエル米駐日大使が日本のLGBT法案を後押しするような言動をしていることについて、我那覇さんは「明らかな内政干渉で、多くの日本人が憤りを感じている。日本にはLGBTへの差別はないのに、法案は『性自認』の定義がなく、成立すればパンドラの箱を開けることになり、なんでもありになってしまう」と批判した。

今年3月、LGBT当事者らでつくる4つの団体が岸田文雄首相らに提出した共同要請書で「米国政府はわが国にさまざまな要請をしている模様ですが、この問題については米国各州で実に方向性が異なり、それぞれに混乱があって参考になりません」と指摘。「諸外国の状況をしっかりと調査した上で、方向性を定めてください」としている。

次回はLGBT当事者の方々から寄せられた意見を紹介しながら考えたい。

今回のテーマを担当するのは大阪社会部次長 津田大資(つだ・だいすけ) 入社25年目の49歳。目下の悩みは、コロナ禍を機に始めた筋トレの効果が芳しくないこと。尊敬する人物は三島由紀夫。

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「世論(せろん)」と「輿論(よろん)」は近年同一の意味とされています。しかし、かつて、世論は世間の空気的な意見、輿論は議論を踏まえた人々の公的意見として使い分けられていました。本コーナーは、記者と読者のみなさんが賛否あるテーマについて紙上とサイトで議論を交わし、世論を輿論に昇華させていく場にしたいと思います。広く意見を募集します。意見はメールなどでお寄せください。

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