少子化対策の行方 未来を選ぶ

少子化「閣内で具体的に話した記憶ない」 舛添要一氏インタビュー

舛添要一氏
舛添要一氏

平成19~21(2007~09)年に厚生労働相を務めた舛添要一氏が産経新聞のインタビューに応じ、当時の閣内では、少子化問題に具体的に対処する機運が乏しかったことなどを語った。

リーマンショック…余裕なかった

――厚労相として少子化対策を抜本的に強化する考えはなかったか

「当時はリーマン・ショックなどで、ただでさえ経済がガタガタで少子化対策に予算を回せる状況ではなかった。何より年金記録問題や新型インフルエンザ、毒入りギョーザ問題などへの対応に追われており、少子化に取り組む時間的余裕がなかった」

――平成17年の合計特殊出生率(女性1人が生涯に産む子供の推定人数)は過去最低の1・26を記録した

「自民党内で『これは困る』という声が上がったものの、幸い翌年から出生率が上向きになった。自然に回復していくのではないかという見込みがあった」

――少子化対策への機運は高まらなかった

「若者の投票率が非常に低いため、少子化対策は票になりづらい。それより高齢者の問題に取り組んだ方が票になるという事情もあった。私が閣内にいたときも、少子化の問題を具体的に話し合った記憶はほとんどない」

日中韓は教育費「べらぼうに高い」

――これまでの少子化対策はなぜ失敗してきたか

「大半が役人の仕事に過ぎなかったからだ。政権として『一応取り組んでいる』と対策をまとめても、政治家の魂が入っていなければ効果は出ない。政策の持続性を保てる長期政権でなければ成果を出せない」

――少子化の原因をどう考えるか

「一番のアキレス腱は教育費だ。出生率が低い日本、中国、韓国、台湾の共通点は、教育費がべらぼうに高い。奨学金を貸与型から給付型に転換し、教育費の無償化を進めるべきだ」

――社会保障制度の給付と負担の世代間格差が指摘されている

「最も大きな問題は年金だ。若者が高齢者に仕送りする現行の賦課方式を改めなければ、支え手が足りなくなり制度が持たなくなる。政権交代が起きなければメスを入れたかった」

社会保険料充当は「姑息な手段」

――少子化対策の財源として社会保険料を充てる案が浮上している

「社会保険本来の目的と全然違う。増税でなく保険料ならばたたかれづらいという姑息な手段だ。必要な政策は税金でやる文化を育てなければいけない」

――岸田文雄政権の少子化対策をどう見るか

「私が厚労相を務めていたころは、少子化問題はニュースにならなかった。政治主導で世間の関心を集めた点は大成功ではないか。このチャンスを生かさないと、誰がやっても少子化は取り返しがつかないことになる」

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