裁判官が法廷で、北朝鮮による拉致被害者の救出を願う「ブルーリボンバッジ」の着用を禁じたのは憲法が保障する表現の自由に反するとして、大阪府内の男性3人が国に計390万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が31日、大阪地裁で言い渡される。焦点は法廷の秩序を守る目的で裁判官に与えられた「法廷警察権」をいかに判断するかだ。
訴状によると、平成30年5月、大阪地裁堺支部で、原告側がある訴訟を傍聴しようとした際、ブルーリボンバッジを外すよう指示された。「何かの間違いではないか」。裁判所職員に確認したが、「裁判長の指示命令」と明言された。結局、着用禁止は判決まで続き、具体的な説明もなかったという。
原告は不動産会社「フジ住宅」(大阪府岸和田市)の今井光郎会長(77)と支援者2人。在日韓国人の女性が民族差別表現を含む資料を職場で配られたとして、フジ住宅に損害賠償を求めた訴訟で、バッジ着用が禁じられた。
後に賠償命令が確定したこのフジ住宅訴訟では当初、女性側の支援者がハラスメント防止の缶バッジを着用。これを受けてフジ住宅の支援者も別の缶バッジを用意したため、裁判所から「メッセージ性のあるバッジは外す」との指示が出た。この対象にブルーリボンも含まれた形だ。
裁判官は法廷警察権に基づき、不規則発言をした人に退廷を命じるなど、法廷の秩序の維持に必要な命令や措置を出せる。最高裁判例はこの権限について「法廷は(審理に)全神経を集中すべき場で、最も尊重すべきは適正かつ迅速な裁判の実現」と言及。「目的や範囲を著しく逸脱するなどの特別な事情がない限り、違法ではない」とする。